しづ子(後半)~立ち上がりたいと思います~ | ブロッギン敗北【ご愛読ありがとうございました】

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アウシュヴィッツが陸の上のジェノサイド、ヒロシマ・ナガサキが空からのジェノサイドだったとすれば、水俣病は海からのジェノサイドである。(栗原彬)
そして21世紀のいま、史上最悪のジェノサイドがパレスチナの地で、殺人国家イスラエルによって遂行されている…


 1950年,朝鮮戦争が勃発した頃,しづ子はダンサーとなって,今の岐阜県各務原市に流れていた。進駐軍相手のキャバレーで働いていたらしい。そこで黒人兵士ケリーと出会い,恋に落ち,同棲。だが,ほどなくケリーは朝鮮へ派兵。麻薬中毒となって日本に帰還,アメリカへ帰国。そして,ケリーの死。・・・
(以上は『夏みかん酢っぱしいまさら純潔など』に収められた正津勉氏の解説による)

 そのあたりの事情を背景にした句が収められた第二句集『指環』は,『春雷』よりも生の悲しみが重く,深く読者の心に響く。



花吹雪岐阜へ来て棲むからだかな


ダンサーも娼婦のうちか雪解の葉


霙れけり人より貰ふ銭の額


花の夜や異国の兵お指睦び


黒人兵の本能強し夏銀河


まぐはひのしづかなるあめ居とりまく


朝鮮へ書く梅雨の降りぎちけり


雪粉粉麻薬に狂ふおとこの眼


傲然と雪墜るケリーとなら死ねる


海の霧へるなくして渡るべきか


霧五千海里ケリークラッケへだたり死す


娼婦またよきか熟れたる柿うぶ


夏みかんっぱしいまさら純潔など




 この句集『指環』の刊行された1952年にしづ子は失踪。その後の消息は不明である。『指環』の跋文にはこう書かれていた。


 何もかも捨ててしまいたい気持ちにさせられます。それでも時折,不意に,此の世に未練がましいものが頭をもたげてきます。・・・前半生を了えてみてつくづく思うことは,けっきょく自分は弱かった―――人生というものに完全に負けてしまった,ということ。

 立ち上がりたいと思います。



 最後の「立ち上がりたいと思います」という言葉が,その意味とは裏腹に,彼女の内攻していく心理を表しているかのようにも思え,悲しい響きを醸す。


明星におもひ返せどまがふなし



 (水無月いなのめにしるす E.K.) 


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