橋下市長に対抗できるのは… | ブロッギン敗北【ご愛読ありがとうございました】

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アウシュヴィッツが陸の上のジェノサイド、ヒロシマ・ナガサキが空からのジェノサイドだったとすれば、水俣病は海からのジェノサイドである。(栗原彬)
そして21世紀のいま、史上最悪のジェノサイドがパレスチナの地で、殺人国家イスラエルによって遂行されている…


 3.11の1年行事に国民が心を奪われている間に原発再稼働への舵を切り,アメリカの陰謀によって北朝鮮製ロケットに国民の危機感が向けられているうちに,「新安全基準」が作られ関西電力大飯原発の再稼働にゴーサインを出した,わが日本政府。世論,とりわけ関西圏の電力消費者の声を配慮するポーズをとりながら,「原発ゼロ」を阻止するために何が何でも再稼働だという政府の思惑は,実は率直で分かりやすい。それに対して,原発地元自治体や原発利権に関係する人たちを除けば,国民の多くは脱原発の方向へ向いている。世論調査では再稼働反対が6割だという。ここに,再稼働かストップかという大変わかりやすい構図ができあがったかのように見える。

 その構図の中に割って入ってきたのが,時の人,橋下・大阪市長である。今,国民的とでもいうべき運動と思想になりつつある"脱原発"の主導権を握ったのは,なんと橋下市長だった。彼が脱原発派としてはニセ者であることは言うまでもないが,脱原発の市民運動側にリーダー的存在がいないことも,エセ脱原発にヘゲモニーをとられた一因である。かつて反原発の市民運動をリードした高木仁三郎のような役割を,脱原発派としては本物の小出裕章や広瀬隆に期待するのだが,どうも地味で,リーダーシップやカリスマ性に乏しい。大江健三郎や村上春樹や中沢新一や内田樹などは中味が乏しく,やる気もないようだ。脱原発の運動がうねりとなって国民的な軌道に乗るせっかくのチャンスであるのに,それが扇動政治家によって政治的に回収されてしまったことは,脱原発に一定の共感を寄せる私としては残念でならない。

 今,国民のうちの良心的な脱原発派は橋下市長に期待を寄せ,マスコミも彼をヒーローとして宣伝するだろう。だが,橋下市長の脱原発的なパフォーマンスは単なる選挙目的の人気取りに過ぎない。橋下市長が,国民の安全を考えて原発の全基停止とか廃炉のことなどに言及したことがあるだろうか。橋下市長が再稼働には反対しながらも,原発住民投票に反対し,中間貯蔵施設の受け入れ賛成を表明しているのも,原発運転の継続を前提にしているからだろう。競争や効率優先の新自由主義的政策やタカ派的・国家主義的な政治立場などからしても,彼がいずれ原発容認・黙認あるいは維持に回ることは予測できる。「(大阪府・市が提案した再稼働の)8条件なんか無視すればいい」という支離滅裂な発言を見れば,おそらく大飯原発の再稼働を黙認しておいて,選挙で脱原発の代表として票を獲得しようという思惑なのだろう。「最後に国民がどっちを選ぶか,選挙で決めればいい」という,次の選挙へ伏線を張った発言を見ても,選挙目当てのポピュリズムであることは明らかである。

 それにしても橋下市長はポピュリストして手強い相手だ。今,彼に対抗できる人間は誰かいるか。上に挙げたような脱原発派の連中の中にはいないかもしれない。もし誰かいたら教えていただきたい。昔ヒクソン・グレーシーと闘った高田延彦のように,また2,3ヶ月前の橋下市長との討論番組に出た香山リカのように,わざわざ負けるとわかっている試合に出てはいけない。今,私が勝てると推薦できる対抗馬は,三毛猫ホームズの赤川次郎しかいないな。先日,朝日新聞の「声」欄に載った赤川の投稿は,短文とはいえ,ミルコ・クロコップの強力なハイキックのように,橋下市長の政治家としての急所を撃ち抜いている。同じベストセラー作家でも,どっかの晴れがましい表彰式でスピーチをするのとは違って,新聞の「声」欄というのが真実味があってよい。投稿文の後半部分を引用させていただく。



 府知事時代,橋下氏は初めて文楽を見て,こんなもの二度と見ないと言い放ち,補助金を削減した。曰く「落語は補助金なしでやっている」。舞台に座布団一枚あればいい落語と,装置を組み,大勢の熟練の技を必要とする文楽を一緒にする非常識。客の数だけを比べるのはベートーヴェンとAKBを同列にするのと同じだ。
 文楽は大阪が世界に誇る日本の文化である。理解力不足を棚に上げ,自分の価値観を押し付けるのは,「力強い指導力」などとは全く別物である。
 過去に学ぶ謙虚さを持ち合わせない人間に未来を託するのは,地図もガイドもなく初めての山に登るのと同じ。一つ違うのは,遭難するとき,他のすべての人々を道連れにするということである。


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〔追記〕
 今日の記事を書き終わった後,ネットで次のような記事を見た。芸術家や音楽家などから受けた非難に対する橋下氏の怨念が,マグマのように蓄積されて噴出したものだろう。このようなイベントを発想すること自体に,クラシックや古典芸能に対する橋下氏のおどろおどろしいルサンチマンを感じるのは,私だけだろうか。


■橋下市長、楽団が1億補助金競うコンテスト提案(2012年4月11日 読売新聞)

 大阪市の橋下徹市長は10日の大阪府・市統合本部会議で、在阪の交響楽団などが1億円の公的支援を競うコンテスト案を提示した。
 起伏のある未舗装のコースをバイクで走るモトクロス場を大阪城公園内に特設し、レースイベントを開催する構想も提案した。今後、実現性を検討するという。
 補助金見直しを進める市の改革プロジェクトチームは大阪フィルハーモニー交響楽団(大フィル)への年1億1000万円の補助金の25%カット案を打ち出している。橋下市長は「補助金をもらうのが当たり前になっている。賞金1億円のコンテストを開き、楽団同士で競わせてはどうか」と提案。音楽イベントの開催など優勝楽団への特典にも言及した。
 また、大阪の知名度を世界的に高めるイベントとして、国特別史跡の大阪城公園西の丸庭園でモトクロスレースを開催する案も明かした。市教委によると、特別史跡の現状変更には文化庁の許可が必要だという。


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