前野曜子という天才ボーカリスト~日本の隠れた名曲part.3~ | ブロッギン敗北【ご愛読ありがとうございました】

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アウシュヴィッツが陸の上のジェノサイド、ヒロシマ・ナガサキが空からのジェノサイドだったとすれば、水俣病は海からのジェノサイドである。(栗原彬)
そして21世紀のいま、史上最悪のジェノサイドがパレスチナの地で、殺人国家イスラエルによって遂行されている…

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前野曜子「蘇る金狼のテーマ~Changes in my life~」



 「日本の隠れた名曲シリーズ」はこれまで2回,このブログでアップしてきたが(part.1part.2),不評のため,しばらく停止状態にあったが,心境の変化により突如今日再開!といっても,今日で終わりかもしれない。このブログはいつだって瀬戸際の最終回!


 今日は前野曜子という伝説のディーバ。ペドロ&カプリシャスの初代ボーカリスト,というのが一番わかりやすい紹介だろうか。「五番街のマリーへ」「ジョニーへの伝言」とヒットを連発した2代目ボーカル高橋真梨子の前である。

 前野がボーカルの時の唯一最大のヒット曲が「別れの朝」(といっても前野がペドロ&カプリシャスに在籍したのは1年足らず)。この曲の大ヒット直後に,前野は突然グループを脱退し,黒人アーティストを追いかけて渡米。数ヶ月後には失意の帰国。このあたりから彼女の経歴情報が本当かどうか怪しくなってくるけれども,ともかくもグループ脱退後は,生来の酒好きと喫煙も災いして,破滅的な人生を歩んだ。そんな中でも,角川映画に見出されて抜擢された「蘇る金狼」の主題歌は,前野の魅力をいま一度,世に知らしめるもので,最高にブルージーで官能的なボーカル・パフォーマンスだった。松田優作主演の映画やドラマにも出て演技していたのも観たが,それはシャレということで大目に見よう。

 経歴や出生などに不明なところが多いが,1988年7月31日,肝臓病を患って死去。40歳の若さだった。しかも彼女の死が世間に知らされたのは,死後3年近く経ってから。ボクが知ったのは,もっと後のことで,確か10年以上経っていたと思う。その間,死んだことも知らないで,ボクは個人的な心の傷を癒したい時,前野曜子を何度となく聴いた。死んでいたと知ったとき,呆然としたと同時に,そのことを10年以上知らなかった自分を責めた。一度ライブ・ハウスで観たかったと今更に思った。

 日本人離れしたエキゾティックで妖艶なルックスと,ハスキーで高音まで通る情感のこもったボーカルが,最高に魅力的で,日本人としては唯一無二のアーティストだと思った。ペドロの2代目ボーカル高橋真梨子も歌が上手いが,前野には足元にも及ばない。それは「別れの朝」を聴き比べればわかる。だが,その二人の人生はあまりにも対照的だ。ソロになってからもヒット曲を出し脚光を浴び続ける高橋と,アルコール依存になって肝臓を壊し,歌を歌えなくなった前野。酒に溺れるのは自業自得なのかもしれないが,それにしても,あれだけの才能を持っていたシンガーだけに本当に残念で,あまりにも寂しい。


前野曜子「別れの朝」


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