3ヶ月の浪費~戦後最悪の内閣退陣によせて~ | ブロッギン敗北【ご愛読ありがとうございました】

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アウシュヴィッツが陸の上のジェノサイド、ヒロシマ・ナガサキが空からのジェノサイドだったとすれば、水俣病は海からのジェノサイドである。(栗原彬)
そして21世紀のいま、史上最悪のジェノサイドがパレスチナの地で、殺人国家イスラエルによって遂行されている…


 ようやく菅首相が最高権力の座を降りることになった。退陣表明をしてからおよそ3ヶ月も政権の座に居座ったことになる。しかも急を要する震災対応・復興の時期に,政治的な求心力も国民の支持も失った政権がこれほどまでに長く居座り,事実上の政治空白を招いたことの責任は,計り知れないほど大きい。日本憲政史上に稀に見る失政だ。とりわけ大震災への対応は,菅首相が政権に就任したときに掲げた「政治主導」という理念とはまさに対極の「政治不能」を露呈することとなった。

 3ヶ月前に直ちに退任していれば,ここまで大きな汚点は残さなかっただろうが,この3ヶ月で震災からの復興も,原発事故への対応も致命的な後れをとった。特に原発事故に関して,国民に不要の被爆をさせたことや,将来に起こるであろう被爆の被害に対しての刑事責任はいずれ問われなければならないが,そのことは以前に書いた。刑事責任とは別に,道義的責任,政治的・社会的責任も,それに劣らず大きい。

 市民運動出身の首相ということで大衆の心情を理解し,弱者やマイノリティに寄り添う姿を期待したが,首相の意欲の空回りや個人プレーが目立ち,統率力にも欠け,おまけに与野党の不毛な政争や駆け引きも頻繁に招いた。結局はリーダーとしての素養に欠けていたということであるが,ならば早くそれを自覚し,身を引いてほしかった。この3ヶ月がいかに重要な時期であるかは,誰だってわかるはずだ。いわば詐欺的に政権に居座り続け,震災対応を大幅に遅らせ混乱を招いたことに対する謝罪は,先日の会見では一切見られなかった。それよりも,「精一杯やった」「一定の成果は残せた」とかいう,個人的な満足感・達成感に充ち満ちた,とんでもない勘違いを国民にさらすだけのものだった。ここまで社会的・政治的状況に対して鈍感な人物は,もはや政治家には向かないだろう。内閣総辞職と同時に直ちに議員辞職すべきだ。それが政治家としての道義的・社会的責任のとり方だと思う。

 大震災は日本にとって大きな不幸であったが,そのときの政権が菅内閣であったことは,国民にとってそれに匹敵するくらいの災禍であった。浜岡原発の停止以外は,経済・財政・社会保障・エネルギー政策などで成果らしい成果は見当たらない。政権発足当初,菅首相が掲げた「最小不幸社会」の実現という目標とは逆に,いまや「最大多数の最大不幸」社会へと現実は突き進んでいる。次期内閣は菅首相の「悪しき統治」を反省し,国民に眼を向けた政策を実行すべきだが,どうも期待がもてそうもない。馬淵がやや異質の政治家だが,当選しそうもない。とにかく震災復興や社会保障改革・財政再建に向けて,一日も時間を無駄にしてほしくないというのが,国民共通の願いである。


 一時間一時間と先へ延ばしているその仕事を夢想することに浪費してしまった一日  (ルナール)


 こんな1日が90日も続いたとは,税金の無駄遣いというレベルではなく,もはや犯罪に等しい!