ベランダに置いてあったテラス席の椅子に座ってそのままテーブルに顔を伏せた。




それからどのくらい経ったのか、会場の方から1人誰かがこっちへ来るのが分かった。




楓(またあの人たちかしら…)




楓は怖くて振り返ることが出来ない。




そっと肩をポンポンと叩かれた。




楓「!!」




ビックリして慌てて立ち上がったけれど、フラッとしてテーブルから手が滑った。




岩「危ない!!」




楓「がんちゃん…?!」




岩「大丈夫?」




楓「う、うん。ありがとう。」




岩「お酒飲んだ?前に弱いって話してたのに?」




楓「…少し…だけ。」




さっきのことを思い出してしまい涙で声が震える。




岩「どうした?」




楓「実は…」




お酒を断れなかったこと、無理矢理キスされたことをがんちゃんに話した。





岩「許せねー。なんてことを!」




楓「いいの、もういいの。私の不注意だもの。」




岩「不注意で片付けたらダメだ。楓さんはなにも悪くない。」




楓「本当にもう…いいの。」




岩「俺に気を使う必要はないから。」




楓「…もう思い出したくもないから、なかったことでいいの。私、忘れるの得意だし。ね。」




岩「…ごめん、俺が演奏をお願いしなければこんなこと起きなかったよな。」




楓「違うよ、がんちゃんこそ何も悪くないよ。」




岩「もう帰ろう。俺も一緒に出るよ。」




楓「大丈夫なの?」




岩「マネージャーに話してくる。これ以上居ても楽しめる気持ちじゃない。」




楓「そう…だよね。私も。」