繋いだ手を隠すように呼んでいたタクシーに乗った。
行き先はがんちゃんがよくゆっくりしたい時に行くという景色のいい場所。
岩「ん〜♪風が気持ちいなー。」
楓「そうですね。」
岩「楓さんはさ、いつからバイオリンを弾いてるの?」
楓「4歳からです。父の影響で。私の父、音楽の仕事をしているので。」
岩「そうなんだ。」
フワッと強めの風が吹いて楓の髪を泳がせた
とっさに髪を押さえた楓の表情が少し曇る
楓「小さい頃からバイオリンが身近にあって、当たり前に弾くようになって、当然のようにバイオリニストになって。
でも本当は私バイオリン弾くの好きじゃないんですよ(苦笑)
正直…バイオリン弾かされて、バイオリニストにさせられたって感じで。
本当はやりたいこと我慢してまでやりたいことじゃないのにって思いがいつもあるんです。
あっ…‼︎これバイオリニストが言っちゃダメなことでしたよね。」
岩「いいんじゃない?みんながみんな仕事=好きなことなわけないし、それにさ、俺しか聞いてないんだから。」
楓「ふふっそうですね、でもヒミツでお願いしますね(笑)」
岩「もちろん!俺、約束守ります。」
楓「がんちゃんに話してなんだか気持ちがスッキリした感じがするなぁ。こんなこと話せる人、周りにいなかったから。」
岩「俺で良ければいくらでも話聞くよ。ってか、楓さんのこともっと知りたいって思ってるから色々話してくれたら嬉しいんだ。」
楓「…ありがとう、がんちゃん。」
岩「この後、どうする?飲みにでも行く?」
楓「そうしたいけれど、今日の公演の反省やバイオリンの練習をしないといけないので、また今度でもいいですか?」
岩「もちろんまた別日にでも‼︎今日は一緒に食事できて良かったよ。」
楓「私も。また連絡しますね。」
タクシーに乗り込んだ彼女を見送ってから、もう一台呼んでいたタクシーに乗って自宅マンションへ向かった。
岩「ただいまー、…っと。」
…ヤバイ
久々に楽しかったなー
楓さんに聞いてみたいことを考えたらキリがないくらいだ。
楓さん、今なに考えてたりするんだ?
今日が記憶に残る時間だったといいけど、
きっともう今はバイオリンのことばかりだろうか。
あーっ‼︎俺との時間の上にバイオリンが見えるな…
バイオリンに負けたくない。なんてバカなライバル意識が生まれそうだ。