明日からのバイオリンコンサートを前に卒業した音大の部屋を借りて最後の練習に来た。



3時間ほど練習して帰ろうとしていた時、後ろから大きな声が聞こえてきた。




黒崎「やっぱり楓さんだ!」




楓「…!?」




黒崎「俺、新幹線でお世話になりました黒崎です!覚えてますか?」




楓「あぁ!久しぶりね〜。もしかしてここの大学に通うの?」




黒崎「いや、まさか!親父に呼ばれて来たんです。」




楓「お父様?」




黒崎「はい、この大学の教授してて。」




楓「‼︎もしかして、あの黒崎教授?!」




黒崎「確かこの大学には黒崎教授は1人しかいないのできっとその“あの黒崎教授”で合ってます(笑)」




楓「教授には私が在学中にも随分とお世話になったの。今日はまだご挨拶できていないけれど…」




黒崎「じゃぁ一緒にランチしましょうよ!」




楓「えっ?」




黒崎「親父と2人だけで昼飯より楓さんが一緒の方が嬉しいですから!♪」




楓「分かったわ、でも教授に確認してからね。」




黒崎「了解です!俺聞いてきます!」




黒崎くんは確認をしてくると言って教授のところへ行き、私は片付けをしてキャンパスの中庭で待つことにした。




黒崎「お待たせしました!オッケーでしたよ!」




楓「教授は?」




黒崎「もう来ますよ。あっ、ほら噂をすれば。」




教授「石神くん!久しぶりだね〜!いやービックリしたよ!先日は息子が世話になったそうでありがとう。」




楓「いえいえ、私大したことしていませんよ。」




大学近くのカフェに行き、ランチを食べ終わってお店を出る前に鞄から取り出した封筒を教授に渡した。




楓「教授ご馳走さまでした。お礼にと言ってはなんですがこれ受け取っていただけますか?私の明日コンサートのチケットです。是非お2人で来てください。」




教授「ありがとう。是非行かせてもらうよ。お前も予定大丈夫だろう?」




黒崎「もちろんオッケー!楓さん、ありがとうございます!」




楓「それではまた明日に。」




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翌日。コンサート当日。




最終リハーサルを終えた開園1時間前の楽屋。




コンコンッ




楓「はい?」




スタッフ「岩田さんがお見えになりました。お通ししても宜しいでしょうか?」




楓「はいどうぞ!」




岩田「こんにちはー。今日はコンサート開催おめでとう。」



がんちゃんは大きな花束を楓に渡した。




楓「わぁ素敵♡今日は来てくれてありがとう。あっこれチケットです。」




岩田「えっ、こんな良い席いいの?」




楓「えぇ。今日のコンサートはこの前とは違った曲もたくさんあるからじっくり聴いてもらえたら嬉しいな。」




岩田「とても楽しみだよ、ありがとう。もう少し話していたいけど本番前で忙しいだろうから早めに失礼するよ。本番頑張って!」




楓「はい!岩田さんを含めて今日来てもらえた皆さんに楽しんでもらえるように精一杯頑張ります♪」



2人一緒に廊下に出て、挨拶と会釈をした後すぐ廊下の先にこちらに向かって手を振る人が見えた。




黒崎「楓さ〜ん!♪」




走ってきた黒崎くんにがんちゃんは軽く会釈して会場へと向かっていった。