楓「すみません、岩田さん?ですよね?」



岩「えぇそうです。」




楓「差し入れありがとうございました!」



岩「あぁ!大したものではありませんが良かったら皆さんで食べて下さい。今日はこちらこそ素晴らしい演奏をありがとうございました。」



楓「あの…先日は演奏会の内容もお話せずにチケットをお渡ししてしまいましたが、クラシックはお好きでしたか?」



岩「うん。聴きに行ったのは10年ぶりくらいかな。なんて言うか、石神さんの演奏を聴いてすごく穏やかな気持ちになったよ。ありがとう。」



楓「そう言ってもらえて嬉しいです。」



岩「あっ、そうだ!あの差し入れの箱に俺からのチケット添えておいたんだけど、」



楓「えっ?あ、ごめんなさいまだ見てなくて…」



岩「良かったら友達誘って来て下さい。」



楓「ありがとうございます、確認しておきます。まだ次の公演が残っているのでそろそろ戻ります。」



岩「うん、また。」



この時、ごく自然と“また”と言ってる自分に少し驚いた。



渡したチケットは三代目のドームツアーライブの初日チケット。



一番緊張して一番気合いの入る初日公演を見て欲しいと思ったんだ。



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数日後。ライブ終了後…


スタッフ「急な差し入れ等はお断りしているんです。」



楓「そうですか…分かりました。」



岩「あっ!その方、俺の知り合いです!」



スタッフ「そうでしたか。失礼致しました。」



岩「すぐ着替えてくるからちょっと奥の控え室で待っててもらえるかな。」



楓「はい。」



ニコッと微笑む彼女を見て、ライブで高鳴った鼓動が更に早まった。



着替えて足早に控え室へ向かった。



岩「ごめん、お待たせしました。」



楓「お疲れ様でした。あの、これ皆さんでどうぞ。」



岩「ありがとう。ね、石神さん、聞いてもいい?」



楓「はい、何でしょう?」



岩「ライブ初めてだった?どうだった?」



楓「はい、初めてアーティストのライブに来ました。すごく心に響く公演でした。私とは表し方は違うけれど同じようにお客様に最高のステージが届いて欲しいっていう熱意が凄く強く込められてるなって感じました。曲の順番には強弱があって落ち着いたパートや一緒に楽しむパートがあって楽しかったです!!目で追いたくなるような演出も素敵でした。」



岩「たくさん感想ありがとう。」


楓「あっやだ私ったらつい…」


岩「いやいやいや、大歓迎(笑)あっ石神さん、今から少し時間取れますか?」



楓「ええ、大丈夫ですよ。」