カフェに着くと私は珈琲をテイクアウトしてテラス席に座ってがんちゃんを待っていた。
美咲「なんだか…ドキドキするなぁ。はぁ…。」
がんちゃんに会ったらまず何を話そう。
がんちゃんは私にどんな話をするのかな?
そんなことを考えていたら、一台タクシーが道沿いに止まった。
美咲「あっ…!」
窓ガラス越しに中に乗っているのががんちゃんだと分かった。
でも、足が動かない。
椅子から立ち上がれない。
怖くて。
こうして待ち合わせるのが今夜が最後だったら…
岩田「美咲…?どうした?」
タクシーから降りてきたがんちゃんは俯く私の顔を覗き込んだ
美咲「ううん、なんでもない。
久しぶり…だね。」
岩田「久しぶり。」
がんちゃんはすっと私の隣に座った。
岩田「やっと会えた。」
深く被った帽子とサングラスの向こうでニコッと微笑む。
岩田「とりあえずタクシー乗ってうち来ない?」
美咲「うん。」
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がんちゃんはマンションに着くとサングラスを外して帽子でクセついた髪をクシャクシャっとする。
岩田「わー、こんなにクセついたら直んないな(笑)」
ニコッと優しくかっこよく笑う大好きな笑顔に釘付けになった。
美咲「やっと見えた。」
私はそっとがんちゃんの頬に手を当てる
美咲「会いたかったよ…。
こうやって近くでがんちゃんの笑顔が見たかった。」
岩田「俺も会いたかった。」
私の手にがんちゃんの大きな手が重なる。
岩田「俺今夜は美咲に話したいことがあるんだ。」
その言葉に反射反応するように私の方から重なった手を下に下ろして繋いでいた手を離した。
美咲「えっ…な…に?」
岩田「実は、共演者に俺たちのことに気付かれた。」
美咲「それじゃ…私たち…」
岩田「いや、話はこれだけ。」
美咲「えっ?」
岩田「えぇっ?何でそんなに驚いてるの?(笑)」
美咲「別れようって話をされるかと思ってた。」
岩田「いやいや、どーしてそうなるの?(笑)」
美咲「だって、距離置こうって言われたし。私たちのこと知られたなら尚更…」
岩田「距離置こうって言ったのは、その共演者が色々探ったりしてきたら嫌だなって思ったからで、誰かに知られても好きな気持ちは変わらないから別れる必要なんてないじゃん。」
美咲「がんちゃん…」
岩田「俺は美咲と別れない。
誰になんと言われようと。」
がんちゃんの右手が私の左手、がんちゃんの左手が私の右手をギュッと握り、向かい合う二人の間で両手を合わせて握りしめた。