美「…あっ…。」
ベッドの上で目が覚めた。
周りを見渡してみると誰もいない…
起き上がると、布団の上から私にかけられているジャケットに気がついた。
美「これ…」
見覚えのあるメンズのジャケット。
ジャケットを手に取り、ぎゅっとしてみると優しい香りを感じた。
私はジャケットを持ち、医務室を出て廊下を見渡してみた。
美「いない…」
医務員「あっ!あなた、もう大丈夫?」
美「はい…」
医務員「席を外してごめんなさいね。今日はなにかとバタバタしてて。」
美「いえ…もう大丈夫ですので仕事に戻ります。」
医務員「ちょっと待って!書類だけ書いて欲しいの。」
美「分かりました。」
医務員「えっと…会社の方から聞いてるけど、名前は中堂美咲さんで良かったかしら?」
美「はい。」
医務員「じゃぁこの部分に署名だけお願い。」
私は何枚か書類の挟まったバインダーに書類にサインをした。
書類を渡す時、別ページの書類が見えた。
美「えっ?岩田…剛典!?」
医務員「あぁ、今人気の俳優さんよね。」
美「体調悪くなってたんですか?」
医務員「頭痛がするって話していて少し休んでいたのよ。」
美「そうなんだ…。」
医務員「中堂さん、この俳優さんと知り合いなの?」
美「え?」
医務員「いやね、俳優さんが眠ってるあなたに気づいてから、心配そうにしてたから…」
美「…。」
医務員「大丈夫?」
美「えっ、はい、大丈夫です。
お世話になりました。」
私は医務室を後にした。
両手でがんちゃんのジャケットを抱いて…。