
⬛️生きて、死ぬ⬛️
夢をもて、目的をもて、やれば出来る、こんな言葉に騙されるな。何も無くていいんだ。人は生まれて、生きて、死ぬ。これだけでたいしたもんだ。他人への気遣いで大切なのは、話を聞いてやることだ。人間は歳を取ると、どういうわけかこれが苦手になるらしい。むしろ、自分の自慢話ばかりしたがるようになる。だけど、自慢話は一文の得にもならないし、その場の雰囲気を悪くする。それよりも相手の話を聞く方がずっといい。あいつ、裏切った、裏切ったって、心の中に毒持って生きてくより、相手にいいことしてやったっていう感覚でいるほうがいいんだ。だって、裏切りなんて、これからもじゃんじゃんあるんだから。それをいちいち自分の問題にして、抱え込んでたら大変なことになっちゃうし。金のことでつべこべ言うと、母親にこっぴどく叱られたものだ。誰だって、金は欲しいに決まっている。だけど、そんなものに振り回されたら、人間はどこまでも下品になるというのが、俺の母親の考えだった。貧乏人のやせ我慢と言ったらそれまでだが、そういうプライドが、俺は嫌いじゃない。人間のやることは不思議で不条理なのだ。俺だって、アフリカで何万人もの人が、飢え死にしているっていうのに映画なんか撮っている。努力すれば、きっとなんとかなるって、そんなわけないだろう。一所懸命やればなんとかなるほど、世の中甘くないってことは、親とか周囲の大人が一番知ってんじゃねえか。必死にやってもうまくいくとは限らなくて、どうにもならないこともある。それが普通で当たり前だってことの方を教えるのが教育だろう。変な言い方だけど自分のために死んでくれる人間が何人いるよりも、そいつのためなら命をかけられるって友達が1人でもいる方が、人間としては幸せだと思う。芸人をやって、映画監督をして。ビートたけしをして、北野武でもいるといういまの人生は本当に疲れる。弱音を吐くわけじゃないけれど、なにもこんなことをしなくても、人生の快感を得ることはできたんじゃないかと思う。コツコツと真面目に働いて、家族を守り、子供を育てる。それだけでも、十分に人生を生きたいという満足感は得られる。有名になろうが、いい映画をつくろうが、その満足感には大差がないだろうということは、この歳になってみればよくわかる。とはいえ、もう一回人生をやり直せたとしても、苦しくても何でも、熱い人生を選ぶ。自分の子供が何の武器も持っていないことを教えておくのは、ちっとも残酷じゃない。それじゃ辛いというなら、なんとか世の中を渡っていけるだけの武器を子供が見つける手助けをしてやることだ。それが見つからないのなら、せめて子供が世の中に出たときに、現実に打ちのめされて傷ついても生き抜いていけるだけのタフな心に育ててやるしかない。世間一般ではアニメオタクとかフィギュアオタクとか秋葉原をうろついてるやつらを何か差別的に指してるみたいで困るんだけど、ひとつのことにこだわって、情熱を傾ける人たちをオタクと呼ぶとしたら、オタクになれるのは実にすごいことだと思うよ。成功の秘訣はいちばんなりたいものじゃなくて、その人にとっては二番目か三番目の違う仕事に就くこと。自分にはもっとやりたいことがあるんだけど、今すぐにそれをできる能力はないから違うことをやってます。それぐらい自分を客観的に見られるやつのほうが成功する可能性は高い。北野武監督🎞。