
父さんが死んでから二度目に、田舎の実家に行ったときに、吸い殻の入った缶コーヒーの空き缶が庭に転がっていた。ショックだった。既に空き家であることを、つきあいがなくとも近所は皆知っているはずだ。田舎だもの。
私が小学校5年生の時に建てた家の前に、家族3人が誇らしく立っている写真が残っている。築約44年ののち、このような終わりを迎えるとは誰も想像していない顔だ。
母さんはおそらくこの実家には復帰できない。当面は無人になってしまう実家の防犯と防火のために、空き家セキュリティサービスを申し込んだ。地元の不動産屋には、月に1回の通水・通気サービスを申し込んだ。
2階建てで8部屋もある実家を、誰かに貸したりエアビーにすればとアドバイスしてくれる友人もいたが、いずれ生じる相続税のことを調べると、そうはしないほうがいいこともわかった。
あるいは、どうせリモートワークをしているんだから、流行りの二拠点生活を始めてもいい。超高速のネット環境を整えて、夏には遠方の友人達を呼んで合宿でもしようか。庭や屋上でバーベキューもできるし花火もできる。
独身独り暮らし、遠距離介護、孤独死、空き家、相続、実家じまい、残されたペットと、2021年に入ったらいきなり現代社会の問題がテンコ盛りになってしまった。しかし、塞ぎ込むよりは、この事実を書き留めていき、誰かの役に立ちたいと思えるようになった。