「風の盆恋歌」 | motoの徒然なるままに…Ⅱ

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日々是好日日記
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2日間かけて読了しました。五感が研ぎ澄まされた作品でした。

全編にわたり、水音と胡弓の音色が聞こえて、酔芙蓉の色変わりと蚊帳の白さがリアルにイメージできました。それは都築克亮と中出えり子との再会と運命を象徴するものでした。

「もっと」
折れるほどに抱きしめた。酔芙蓉の根もとで、豊かさを増したと見えた体は、矢張り都築の腕の中でしなうほど細かった。(高橋治「風の盆恋歌」より)

この主人公都築と不倫相手えり子との水音が聞こえてくる蚊帳の中のラブシーンは官能的でした。そして儚さを感じました。30年も思い続けていた感情が一気に昇華して散っていく中に無常の風が吹きました。

この本を携えて、八尾の風の盆を見に行きたくなりました。実際、この本で越中おわらの祭りがカミングアウトしました。

それにしても、作者の繊細な描写には痺れます。花鳥風月の世界を堪能しました。

酔芙蓉 咲いてはかない 風の盆(なかにし礼)

「陽に輝やく花があるのに、それこそ陽の目も見ずに酔って散る花もあるのね」