NHK 世界遺産 一万年の叙事詩「第1集 先史～文字なき世界世界の記憶～」
今から2200年前、世界遺産・屋久島で縄文杉が芽吹いた頃、中国では万里の長城が築かれヨーロッパではローマ帝国が絶頂を迎えていた・・1300年前水上の聖地が誕生、東の都では巨大な仏の目が開かれた・・そして500年前、フィレンツェの画家が咲き誇るルネサンスを一枚の絵に描きあげた頃、インカでは空中都市が完成し、絶海の孤島では先祖に捧げる祈りの声が響いていた。
世界遺産、それは歴史をたどる道標、実に900を超える世界遺産が人類のドラマを新たな姿で浮かび上がらせる。
今回のテーマは、紀元前10000年～紀元前3000年まで文献も記録も伝わっていない時代の世界遺産です・・歴史とは文字で書かれた記録、まだ文字がなかった時代は、先史と呼ばれます。
先史時代人々は狩猟生活を行っていました。
世界遺産 ヴェゼール渓谷の装飾洞窟群（フランス）
1940年に発見されたラスコーをはじめ25の洞窟に壁画が残されています・・暗闇の中に描かれた何百頭もの馬や牛・・狩りで暮らす人たちの動物たちに向けた畏敬の念が感じられます。
世界遺産 アルタミラ洞窟（スペイン）
長さ270ｍの洞窟に描かれた動物たちぼかして書かれた毛並みや陰影のついた筋肉の盛り上がりなど今そこにいるかのような迫力です。
洞窟のカンバスに先史時代最高のテクニックが存分に発揮うされています。
世界遺産 タッシリ・ナジュール（アルジェリア）
今は乾ききったこの地にも壁画があります・・動物や人々の生き生きとした姿からここがかつて緑のオアシスだったことがわかります。
記録としての性格が強い一方、壁画には神のような存在も描かれています・・ここは現実と非現実とが混ざり合う場所だったのです。
世界遺産 カカドゥ国立公園（オーストラリア）
この台地に4万年前から住むというアボリジニの聖地、彼らの知恵が壁画に刻まれています・・中でも独特な技法で魚の骨やカンガルーの内臓を描いた絵・・レントゲン画法といわれます・・動物の急所や狩の方法を後の子孫に伝えるために書かれたと考えられています。
世界遺産 リオピントゥラス渓谷の『手の洞窟』（アルゼンチン）
なぜか左手が多い手形・・やはり古代人も右利きが多かったってことですかね。
狩猟民族が刻んだ世界遺産の壁画、人類一万年の始まり、それは壁画の世界だったのです。
そして今回ご案内するのが南米ブラジル・・ラスコーよりもアルタミラよりも圧倒的に絵の数が多い壁画の遺跡があります。
世界遺産 カピバラ山地国立公園（ブラジル）
一万年以上前の人類の痕跡を伝える場所として1991年に世界遺産に登録されました・・ラスコーを中心としたフランス・ヴェゼール渓谷の壁画の数25カ所に対してこのカピバラ山地国立公園は600カ所・・ここは世界一の壁画の宝庫なのです。
描かれた絵の数は3万点、数だけではありません絵のバリエーションも他を圧倒しています。
天体観測・・家族で星を見上げている場面です・・狩猟の様子、妊娠した女性など先史時代のひとが今と変わらない家族の喜びを求めていた事がよくわかります。
カピバラは動物の種類も圧倒的に多いのです・・その中でも上記写真のように人間が動物よりかなり小さく書かれている絵が沢山あります・・なぜでしょう？
その答えが近年遺跡から相次いで発見されています・・
サンレイムンドノナト考古学研究所 クロード・ゲラン博士
「この地域で発見された哺乳類の骨です・・オオナマケモノ・像によく似たマストドンでどちらも体重は6トン・・どれも1万年前のものです」
巨大哺乳類の骨は壁画が描かれた遺跡から発見されているのです・・当時、人間と巨大哺乳類が共存していた証拠です。
巨人が描かれています・・世界遺産で巨人の絵といえばタッシリ・ナジェールの白い巨人ですかそのそばには手を合わせ祈るような人物が描かれています。
それは遠く離れた南米・カピバラ山地の巨人にも共通しているのです・・タッシリ・ナジェールの白い巨人は人々の守り神だと言われています。
アフリカでも南米でも先史時代の人々は同じように神のイメージを思い描いていたのかもしれません。
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