考えるヒット | Electronic Dolphin Eats Noise

Electronic Dolphin Eats Noise

空論上の九龍城

90年代後半の、あの今じゃ想像すらつかないJ-POPバブル。を語るに最適の副読本。

考えるヒット/近田 春夫


近田さんって、時折タモリ倶楽部で見掛ける面白いおじさまぐらいの認識が一般的だろうけれど、本書を手にすれば、あ~鋭い音楽評論家だったのね!と納得される事でしょう。けど、それも違う。
近田さんこそ70年代から2000年代に亘って、邦楽シーンをリードし続けてた最重要な音楽家である。

グラム・ロック~NW/テクノポップ~ヒップホップ/ハウス~トランス。と、彼の音楽遍歴は節操が無い様で、その実邦楽の指針となるべき作品を要所要所でリリースし、まさに先導者(扇動者)である。
個人的には細野さんとTKとの狭間に彼を置いてしっくしている。

そんな彼が批評家としても超一流だと言うの有名な話だったそうですが、その決定打となったのが1996年末から始まった『週刊文春』でのこの連載である。
コンセプトは単純。その週周辺にリリースされた話題のシングル曲を彼が勝手気儘に語るのみ。
しかし、だ、これが無類に面白い!
今もTV出演時にマシンガンの様に繰り出されるあの語り口まんまで、そんじょそこらの批評家も真っ青な鋭さで切り拓くJ-POPシーン。
音だけでなく歌詞の面でもプロフェッショナルであり、しかも90年代後半も全く以って現在進行形なミュージシャンであった彼にしか出来ないアプローチは、独特のグルーヴ感と毒っ毛もあって快楽性が高い。

特に第1巻(時代的には1997年)時ピークを迎えていたTKの楽曲群を、誰よりも真摯に真正面から語っている(ってか、当時まともに語っている人は皆無だったのだ)姿には1ファンとしての感動を超えて感謝を捧げたい。
第2巻では近田×TKの待望の対談が巻末に収められ、それこそ興味深いエピソードがポンポン飛び出しているものの、スケジュールや紙面の都合からか未消化に終わっているのが至極残念。