マタイ受難曲に触れての覚書 | ERI`sLeaf

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ピアニスト・黒田映李のBlogです。

「その音楽家がどれだけ宗教に入れ込んでいたか知ることで、音楽をよりひも解くことができる。」

以前共演させて頂いた指揮者・マルコヴィッチ氏の語っていた言葉を身にしみて感じつつ、
小オペラを見ているような、聖書の中に迷い込んだような、濃厚な時間を過ごしました。

シギスヴァルト・クイケンとラ・プティットバンドの演奏で、マタイ受難曲。


ドイツ語の要役にドイツ人の若手テノール歌手(ライプツィヒに学び、現在も在住)が配役されていたことで、この作品がドイツ語で上演されることの意義もしっかりと守られていたように思います。


ベートーヴェンの「3」にこだわる真髄だとか、
ここという嘆きの最中にdurに行くところとか。
この人感情を逃がすんだなあ・・・と思っていた所は、信仰から来ていたのかもしれないな等、
鑑賞中はベートーヴェンにリンクして考えることが多くありました。


ユダヤ人として、キリスト教に改宗後も苦しんできたメンデルスゾーン。
彼がこの作品を発掘・上演したことで、この作品は今日まで歌い継がれ、バッハは現代にも名が知られています。
メンデルスゾーンの生涯の苦しみと、それでいてバッハを敬愛し、この作品を復興させる音楽愛。
… 現代に生きて無宗教の私は、その心、今もよく理解できていません。



ヨーロッパに留学した当初、様々な教会を訪れ祈りをささげても、宗教による争いや歴史を思うと、十字架をファッションとして取り入れることが全くもってできませんでした。

いつからか、カジュアルに考えていいじゃん!と割り切って今に至りますが、
今日あの音楽に触れ、内容に触れ、今一度考えなくてはならぬと思った次第です。

我が記憶のかなたに葬られかけている歴史の知識、洗い直したいと思います。




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「こんなに良い演奏でマタイ受難曲デビューなんて、他聴けなくなっちゃいますね!」

日本語字幕、歌詞はドイツ語、バロック音楽に適した素晴らしいホール、バロックアンサンブルとして世界第一線に立つアーティストさん達…

仰せの通り、この作品を真髄から知ることに何もかもが揃いすぎだった、幸せな時間を過ごさせて頂きました。

お招き下さったTさんに心から感謝申し上げます。

クイケン氏自ら手掛ける、ラ・プティットバンドのHP