二宮健監督「SLUM-POLIS」はシネコンでやってる制作費何十億の邦画を蹴散らす | 映画遁世日記

二宮健監督「SLUM-POLIS」はシネコンでやってる制作費何十億の邦画を蹴散らす

※最初ツイッターでつぶやこうとしていたのですが、えらく長くなって分割数ハンパなくなってしまった(笑)のでココで書きます。よって映画の中身(ストーリー等)には直接触れておりません。



カナザワ映画祭『期待の新人オールナイト』で鑑賞した二宮健監督「SLUM-POLIS(スラムポリス)」(2013)。審査員の柳下毅一郎さんをはじめ「長い」という意見がちらほら見られるのだけれど、これにもの申します(というか補足します)。

なんといっても本作の上映開始時間は夜も夜中の3:30からだった、またその前に上映された選考作品3本の上映時間が39分~68分と短めだったというのも考慮しないといけないのではないか、ということ。また、実直に、そして魂を込めて作られ、しかも素晴らしい映画となっている本作に対して、そのこと(「長い」という意見がある)ばかりが一人歩きしてしまうのは、ちょっと可哀想なんじゃないか思う(ほんとはそのことばかりが一人歩きしてるってほどでもないのですが、ね)。実際柳下毅一郎さんは本作に対し賞賛を贈っており、最後の最後に『惜しむらくは』と添えてから「もっと短くてもいいんじゃないか」「(やろうと思えば)70分くらいに出来る」(流石にそりゃねぇーですよ!・笑)などとおっしゃっていたと思う。あの「皆殺し映画通信」「映画欠席裁判」の柳下さん(しかも怪作「君を連れて行く、いいよねいいよね。」を大画面で観て会場全体が脳みそがトリップ(←ちなみにこれは賛辞です!)している状態の朝7:00)から出た注文(?)がこれ一点のみというのはこれ、また別の批評家25人くらいから大絶賛を喰らったほどの価値があるといえる(笑)。

かくゆう、この日僕は「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」(映画祭と関係ない?「ブラックホーク・ダウン」どうした?すすす、すいません、前から約束してたのでw)「マッドマックス2」「Uボート」(208分!)「オールドフレンド」「NIGHT SAFARI」「瘡蓋譚」と、丸々一日中映画漬け状態の中、明くる3:30頃から上映されたこの「SLUM-POLIS」を鑑賞したわけなのだが、2時間まったく集中力が途切れる事がなかった。個人的体感では「かさぶた譚」(39分)とあんまり変わらなかったよ(笑)。この映画が凄いところは、『いまどきこういうタイプのストレートでピュアピュアで美麗で残酷でエモーショナルな映画、撮るヤツいるのか?』などと腐されそうな、そんなちょっぴり寂しい2010年代現代において、『それ』を圧倒的力量で描ききっている事である。自分のようなオッサンとしては、「これ90年代辺りに観たような感じだなぁ」といった既視感に襲われそうにもなるけれど、コレを今やってハズさないで成立、また感動させるのってのは至難のワザであると思う。言い方は悪くなるけど、カッコつけてちゃんとカッコいい。こういうこと、ベテラン映画監督でも難しいのではないだろうか。映画のクライマックスでは、場内ですすり泣く人の声も聞かれましたし…もう明け方ですよ?(笑)そしてここまで書いてて忘れてましたけど、これ大学の卒業制作とかですよ?すごいなぁ。

なお、今回の「期待の新人オールナイト」上映作品、個人的には本作だけではなく内田裕基監督「オールドフレンド」、小林勇貴監督「NIGHT SAFARI」、繁田健治監督「君を連れて行く、いいよねいいよね。」は本当に面白かった。「SLUM-POLIS」「長い」とか書かれてる問題と一緒で、一発目に上映された(しかもその後の作品もインパクトのあるものばかりだった)ばっかりに今イチ「オールドフレンド」に対するリアクションが少ない事も気になっております。「オールドフレンド」もめちゃくちゃ良い、驚異の映画だったのにぃ。「NIGHT SAFARI」「君を連れて行く、いいよねいいよね。」も最ッ高なんだけど、これらはけっこう話題になっているのでここでは特に何も書きませんでしたが、大好きだ。(結論:オールナイト面白かったなぁ~)