若松孝二「海燕ホテル・ブルー」(2011) | 映画遁世日記

若松孝二「海燕ホテル・ブルー」(2011)

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海燕ホテル・ブルー (2011)
企画/監督: 若松孝二
原作:船戸与一
脚本:黒沢久子、若松孝二
撮影:辻智彦、満若勇咲
音楽:ジム・オルーク
出演:片山瞳、地曵豪、井浦新、大西信満、廣末哲万、ウダタカキ、岡部尚、渋川清彦、 中沢青六、水上竜士、山岡一、東加奈子

今日、地元の映画館シネモンドにて「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」若松孝二監督の舞台挨拶が行われるということで足を運んできました。舞台挨拶前、トイレの出口付近ですれ違った若松監督は杖をつかれてとてもしんどそう(事実体調は芳しくなかったようです)でしたが、一旦舞台に上がればいつもの若松節で我々を楽しませて下さいました。

で、映画のほうなのですが、どちらかというと「三島由紀夫~」の影に隠れがちだった…いやぶっちゃけ今日に関しては自分としてもオマケ程度にしか考えていなかった「海燕(かいえん)ホテル・ブルー」のほうに僕はおもいっきり感銘を受けてしまいました。

ですので「三島由紀夫~」のほうはうっちゃって、こちらの感想(もどき)を書きます。

本作は、地曵豪、井浦新演じる前科モノ2人を含め、出てくる野郎は"皆バカと"いうある意味喜劇=ギャグ映画、そして怪奇幻想奇談であると僕はミタのですが、ひとことで書くと"めちゃくちゃ映画"です。「連合赤軍」「キャタピラー」「三島」からなる昭和三部作とは違い、監督も役者さんも肩の力を抜いて好き放題やっている感じが観ていて痛快で、特に、兄貴(地曵)にスカされまくる井浦新の演技には最高に笑わせてもらいました(笑うところじゃないのかもしれませんが)。他の出演者も皆さん完璧といえる演技でノビノビやられてますし、監督もノビノビ撮られたようです(※)。

この映画、あまりにも好きすぎて、まさか2011年度作にして私的若松映画5~3本指に入るほど気に入ってしまいました。デジタル撮影時代に入っての若松映画、その映像の質感、「連合赤軍」では感じませんでしたが、「キャタピラー」「三島」は個人的に少々残念に感じていたのですが、この「海燕ホテル・ブルー」に関しては「デジタル撮影であろうが何であろうが60年代の若松映画となんら変わらないテイストじゃないか!」と、なんら一点の曇りもなく、お世辞(ベテラン監督のワリには頑張ってるな…みたいな)抜きでそう感じました。演出も編集(その間合い)もまた最高で、近年の若松作品としては…なんと言うかフレッシュ。そもそも根本的なハナシになりますが、ストーリー自体がなんとも面白い(原作勝手に改変分含む)、笑える。嗚呼本当に最高ですこの映画は。

僕としては、若松監督には死ぬまでこういっためちゃくちゃ映画を撮っていって欲しいのですが、そうもいかないのでしょうね。

(※)パンフレット(ジム・オルークのサントラCD付きで1200円。やすっ)より

「だから、これは、60年代の自分のやり方に戻って、むちゃくちゃに撮ってみようって思ったんだよね」(若松孝二)

「監督も昭和三部作の呪縛から解放されて、その上で、これまでの経験をもって撮るわけだから。その中で、僕らは相手を信頼しながら自由に芝居ができる。これってあまりない状況だよね」(井浦新)


おわり