Archi-story 桂離宮005「中秋の名月を再現!月見台は本当はどこを向いているか」 | Dynablog!

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読んでふわっとあったかくなってね~♪

パーヨッ まいどっ!

術後1年の記事、暖かなたくさんのコメントに感無量ですっ きらきらうるうる

ありがとうございました!!!お返事書かせてもらいました♪

 

みなさんあってのDynablog、これからもよろしくお願いしますっ!!

 

さて!!本日は予告通り、完全にマニアックワールドに入ります。お覚悟を。

そのかわり、一般の通説をひっくり返しますよ。

Dynablog、渾身の記事、どうぞ楽しんでくださいませ♪ 


 

Archi-story 桂離宮

005 中秋の名月を再現!月見台は本当はどこを向いているか

 

さて、前回、桂離宮の全ては月見台に尽きる!と豪語しました。そして

最も重要な月見台を「どの方向に建てるか」が、核心です。

なぜなら、月見台の方向で「月がどう見えるか」が決まってしまうんですから!

 

最も有名な説が、宮元健次氏の著書『桂離宮 隠された三つの謎』に記載されている、


「月見台の方位(東南29度)は、

 1615年の中秋の名月の月の出の方位とぴたりと一致する」

 ※1615年というのは桂離宮が最初に建設されたとされる年


つまり、当時、最も高く評価された「月の出」。宮元氏の計算によれば、

月見台は、その中でも中秋の名月の月の出方向に完全に一致しており、

真正面に「月の出」を楽しめるようになっている、というのです。

 

桂離宮を紹介する多くのサイト、また市販の本や京都の観光サイトでも取り上げられ、

一般の桂ファンには通説になっています。

 

一見、ロマンチックな話ですが、私はどうしても納得できませんでした。

 

もし自分が智仁(としひと)親王ならば、中秋の名月を長く楽しみたい。

真正面から月が出てしまえば、月が見える時間が少なくなってしまう。

 

(-゛-) 本当にこれ、正しいのだろうか。

 

だったらDynablogで、中秋の名月を復元だーっ!やるよね~(笑

 


1.月見台の方位と月の出の照合

 

桂離宮改修時の図面によれば、月見台の方位は東南29度

今は便利なことに、Google Mapで経度・緯度・標高までわかります。図の通りです。

 

さて、ここでは桂離宮の造営が始まった1615年と、

実際に月見の宴が開かれた1624年の中秋の名月を追ってみましょう!

 

中秋の名月とは、旧暦の8月15日。これを西暦に変換すれば、

 1615年 10月  7日

 1624年  9月 27日

が、それぞれの中秋の名月の日になります(毎年違うんですよ~!)。

 

これを「暦のページ」で調べると、その日の月の出の方位がわかるんです!!

 

結果はコチラ!

 (1615年 10月7日 月の出17:38 方位角79、月の入7:04 方位角285

  1624年 9月27日 月の出18:06 方位角85、月の入6:58 方位角277)

 

そうです!

1615年の月の出の方位角は「北から79度」

月見台方位とは40度もずれているんですよ!!

 

「ぴたりと一致」どころか、「完全にずれている」状態です。

 ※一体、宮元氏はどのように計算されたのでしょうか・・・?

じゃあ、月見台から、実際にはどう月が見えたんでしょう。

気になってきませんか??

 


2.1624年 中秋の名月の軌道

 

どうしても実際の月を再現したい!

特に、智仁親王が実際に宴で見た「1624年の中秋の名月」を見たい!!

 

で、一生懸命考えました。で、近似値は計算できるぞ、と思ったのが、コチラ。

 

 

月見台を中心に、プラネタリウムのような半球形のスクリーンをつくる。

計算で出る「月の出方位角」「月の入方位角」「南中時の仰角」の3ベクトルと

スクリーンの交点3つをつなげば、スクリーン上にきれいに円弧ができる。

 

この円弧こそ、月見台から見た「月の軌跡」になるはず?ですよね?

 

あとは月の出と入、南中のそれぞれの時刻から割り出せば、時間ごとの月がわかるぞ!

 

これは3次元の作図が必要なので、Autocad 2009の体験版をダウンロード、

操作に四苦八苦しながら、とうとう!!やりましたよ!!

 

 

ででーん!!これが月見台から見た月の方向ですよ!!!

方向がよくわからないので、上から見てみましょう♪

 

 

これが真上から見たイメージです。

18時の月の出から23時頃までが、まさにベストショット!!

月見台から存分に楽しめる位置になっています。

 

やがて夜中から1時頃に月は西にどんどん動いていき、

2時には完全に建物の裏にいってしまいます。

 

こうしてみると一目瞭然!つまりは!!

「月見台は中秋の名月の最も美しい月の出から南中までを

長く楽しめる方向に向いている」ということです。

 

中秋の名月の月の出は、毎年毎年変化します。

だからこそ、ある年の月の出の方位にぴたりと合わせることは、意味がありません。

 

私は、月の出から中天に昇っていく、最も美しい時間を

長く楽しめる方向だったのではないか、と思います。

 


3.計算の検証と実際のイメージ

 

記事を発表するまでに、自分が間違ってないか、ずいぶん検算しましたが、

いずれ、フリーのサイトと体験版ソフトで再現したものですから、一抹の不安が。

 

そしたら、今日、こんなソフトがあるのを発見!

「ステラナビゲーター8」

なんでも、あらゆる設定のもとに、太陽系のどこからの眺めも再現できる!という

素晴らしいソフトでございます。

 

でも、買えましぇん・・・んん!!? た、体験版があるーっ!!

 

安くてうまいDynablog、検証も体験版でやってみますた(笑

 ※図中の経度・緯度は、ちゃーんと度分秒に換算してありますYO!

結論から言うと、

月の出入時刻と方位角、南中時刻と角度、軌跡にいたるまで、

ほぼ完璧に正解クラッカーでございましたっ!!!いやっほーい♪

 

それでは・・・いよいよ自信をもって、

トシヒトが見たであろう、1624年、中秋の名月の再現でございます。

 

月見台から真正面を見た過程で、おおよそのパース下地をつくり、

そこに、計算した月の軌道を乗せてみました。

 

お待たせしました。

 

こちらが、「1624年 月見台から見た中秋の名月」でございます♪

 

 

18時頃から月は出ますが、庭園も堤防もありますから、もう少し待ちましょう。

19:00前、そろそろと背景から月が顔を出し始めます。

月と桂の風景、近くには庭園がほんのり月明かりに照らされていますね。

20時から22時ころは、まさに月見台の真正面!

ちょうど前面の池に映った水面の月とダブルで楽しむ絶好の時間です。

やがて月はぐんぐんと高度を上げ、背景を引き離していき、

23時から南中する0:30ころ、世界はまさに「月と自分」だけになります。

心静かに、月と対話したのではないでしょうか・・・。 

 

※実際の月見の宴は、一ヶ所ではなく、様々場所を移動しながら、庭園を歩きながら、

また船に乗りながら月を楽しんだそうです。月見台は、宴の最中、いつ戻っても

その時の美しい月を楽しめたのだと思います。


 

以上、長々とお付き合い、ありがとうございました♪

 

宮本氏が複数の著作に言及されている、

「月見台と1615年の中秋の名月の月の出方位は完全に一致する」は、正しくありません。

 

再現してわかったことは、月見台から見た中秋の名月は、

月の出から夜が更けるまで、様々な月の姿を存分に楽しめる、ということです。

 

智仁親王の月をこよなく愛する思いが伝わってくるようです。

月見台については、一応、今回で終わりです。

また、別の魅力をご紹介したいと思います♪

 

お楽しみに~っ!!

 

Takio