★2019年に「MDS→AML」になった妻・移植までの日々を夫の目線から振り返ります★

 

「彼女の3回目の涙…」。

 

入院して抗がん剤が始まる前日「長いままだとシャワーの時に大変だから…」と一緒に院内の美容院で髪を短くしてもらう事にした。

しかし、その日は美容院が休みだったため、改める?と聞くと「どうせ抜けちゃうから」と隣にあった理髪店へ。

 床屋さんで大丈夫かな?そう思ったが、のぞいてみると、ちょうど前の男の人が切り終わった所ですぐに切ってもらえることになった。僕は彼女の心情を考えて、終わるまで見守ることにした。

 おじさんの理容師さんとのやり取り。「どのくらいに?」「皆さんどのくらいにしてるんですか?」。「治療に入る方はかなり短く、坊主にされる方も…」。鏡越しに「どうしよう…」と目配せしてきた妻。その瞬間、妻は何かが詰まったように嗚咽した…。

以前、私に気を使ってなのか「髪については仕方がない…もう割り切った」的なことを言っていた気がする。

 

しかし、当時31歳。毎日手入れしてきた自慢のロングヘア―…。女性の象徴である髪…。「整理がつかない気持ち と 現実に追いつけない心」…。男性の私には決してわからない、入り混じる様々な感情が吐露したのだろう…。
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ハサミが通るたびに想い出が落ちていく
人は髪を切る前にきっと何かを片付ける
(槇原敬之『髪を切る日』)
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 結局、彼女はかなりのショートヘアーにした。


 マッキーが歌うのは失恋。少し違うかもしれないが、彼女の心の中で何かが片付いたのだろうか。カットした後、その表情には切る前にはなかった「覚悟」のようなものが感じられた。