鬼滅の映画『無限城編 第一章 猗窩座再来』を観てきた

(この記事はネタバレを含みます。暴力を推奨する意図はありません)

 

猗窩座(あかざ)推しなので、猗窩座の魅力について語りたい!

 

猗窩座は、勧善懲悪の二元論で言うところの「悪役」に位置付けられる鬼だ

 

圧倒的に強い悪役だが、オリジン・ストーリーには生身の人間の悲しさや葛藤があり、強さと儚さが相まって、とにかく魅力的!

 

近年のヴィラン・オリジンとの共鳴

近年のヴィランのオリジン・ストーリーを描いた映画には、『ジョーカー』や『マレフィセント』、『クルエラ』が思い浮かぶが、その中でもインパクトがあるのは『ジョーカー』だ

 

『ジョーカー』が公開されたのは2019年で、猗窩座のオリジン・ストーリーが描かれた鬼滅の単行本の17巻と18巻の発売も実は同じ年

 

偶然とは思えないタイミングの一致に加えて、設定まで共通点がある

  • 『ジョーカー』の主人公アーサーの母親も、猗窩座の父親もともに病床に伏せっている
  • 貧しい家庭で育ち、辛抱強く親の看病をしながら、生活費や薬代を稼いだり盗んだりする
  • 心優しくて懸命に生きているが、頑張っても報われないどころか、社会は理不尽な仕打ちをする

こうした2人の背景からは、人間らしさや痛み、悲しみが伝わってくる

 

推しポイント

猗窩座の圧倒的な強さの裏側には、痛みや悲しみ、そして葛藤がある

 

それを知ったときに、猗窩座はただの悪役ではなくなり、共感と畏敬の念を抱かずにはいられない、魅力的なキャラクターになる

 

推しポイントはたくさんあるんだけど、それはすべて突き抜けた「気持ちの強さ」という一点に集約される!

 

この心の在り方こそが、猗窩座を語る上ではずせない!

 

 

強くあらねばならない理由

鬼となって、強くあらねばならないその理由を忘れてもなお、至高の強みを目指す猗窩座

 

強くなければ、お父さんに薬を買ってあげられない

 

強くなければ、守りたい人を守ることができない

 

人間の狛治が強くあらねばならない理由は、まっすぐで、優しくてあまりにも真っ当だった

 

けれど、その守るべき師範と恋雪が、理不尽に殺されて、絶望し彷徨っていた時に、鬼舞辻無惨が現れ、問答無用で鬼にされた

 

望んで鬼になったわけではなかった

 

鬼になって、人間の時の記憶を失い、どうして強くあらねばならないのか、その理由を忘れてしまった

 

記憶を失っても、消えない感情に突き動かされて戦う姿に心を打たれる

 

思い出から編み出される技

漫画の空きページ(154話の終わり)に書かれているが、猗窩座が使う技は人間の時の思い出から編み出されている

 

構えや技は、師範に習った素流を基にしている

 

一番切ない技は、術式展開 破壊殺 羅針だ


これは相手の闘気を感知する羅針盤で、雪の結晶の形をしている雪の結晶

 

雪の結晶は、狛治が夫婦になって一生守ると約束した恋雪の髪飾りのモチーフだ

 

狛治は、恋雪と一緒になることで、人生をやり直せるんではないか、そんな淡い期待をした

 

恋雪は真っ当な人生を送るための羅針盤のような存在になるはずだった

 

しかし、師範と恋雪は、理不尽にも毒殺されてしまい、狛治は生きる意味を失う

 

お父さんが狛治にあてた遺書に、「真っ当な人生を送るんだ」とあったが、その真っ当な人生の羅針盤となる恋雪を失い、全てがどうでもよくなってしまった

 

守ると誓った恋雪の髪飾りの雪の結晶が、戦闘時の敵の闘気を検知する羅針盤として現れる

 

この構造がとても切ない

 

それほど、恋雪の存在は大きく、大事なものだったということを際立たせている

 

本当の強さ

猗窩座は炭治郎に嫌悪感を抱くが、それは素流を教えてくれた師範と重なり、自分が人間だった頃の記憶を想起させるからだ

 

鬼として弱者を毛嫌いしていたが、それは昔の弱い自分自身を逆説的に否定しているのだった

 

狛治は、貧しい家庭に生まれてから社会的に弱い立場で、理不尽な目にあい自制が効かず自暴自棄になってしまう

 

そんな弱い自分と対峙できないままに鬼になってしまった

 

炭治郎に頸を切られて、過去の記憶が蘇り、鬼として無意味な殺戮を繰り返してきたと悟った

 

一番殺したかったのは自分だと、自らに技をかけても体が蘇生してしまう

 

魂が成仏できないからだ

 

お父さんの遺言は守れず、師範の素流を汚してしまい、恋雪を守れなかった自分を許してもらえないと思い、自分でも自分を許せなかった

 

そんな気持ちに対峙できたことで成仏できた最後の姿は、自分の弱さに向き合う勇気が、本当の強さだと気付かせてくれる

 

猗窩座の強さと狛治の儚さが重なり合ったこの余韻にしばらく浸っていたい