読んだあとは、主人公の有人と一緒にフェリーに乗って海原を進んでいるような、清々しい気持ちになった。
中2の9月、有人は、学校で起きた出来事をきっかけに、まわりの冷ややかな視線と容赦ない蔑みの言葉、つまりいじめられて、不登校になり、未来を失ったと絶望し、自分の部屋に閉じこもってしまう。
高1にあたる、16歳のお正月に、部屋に閉じこもっている有人を見かねて、叔父は、北海道の離島にある高校へ進学を勧めてきた。
叔父の思惑通り、受験することになり、合格してしまった。
叔父と島で出会う人々とのやり取りがあって、有人は高校に通うようになる。
うーん、やっぱり、人は周りの人に作られてるんだな、と思った。
叔父の有人へ向ける温かいまなざし。
同級生の誠の、有人と友だちになりたいという、まっすぐな気持ち。
涼先輩がひたすら有人にやさしい。
東京から島の高校に進学してくる、しかも寮にはいるのではなく、叔父と同居するということで、もともと島民も高校の子も、有人は「訳あり」だと察していたのだろう。
それを特段取り立てるわけでもなく、ただ、有人をそのまま受け入れている接し方だった。
対して、東京の叔母は、人を学歴という条件付きで評価していて、あー、なんかそういうのって、ほんとに息苦しい。
(田舎も、一気に情報が口伝えで広まってしまうのも息苦しいのかもしれない。。。)
自然の描写も多くて、光や色があふれていて、そんな環境も有人に良かったのかな。
頭で考えるんじゃなくて、肌で感じる開放感があったのでは。
有人にとって、最初は奈落の底と思っていた島が、いつしか自分の安全地帯となった。
そこで甘えてはいけないと、自分の元々の医師になりたいという目標に向かって東京に戻っていく姿に、うるっときた。