瀧本先生のラジオは毎週月曜日の23時からと、毎週土曜日朝8時から再放送されます。

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今週は吉野弘さんの詩からスタートです。

 

 

先生:「吉野弘さんという日本を代表する詩人の【祝婚歌】という詩を今日は先に朗読したいと思います。」

 

 

〜〜〜〜〜〜

祝婚歌

 

二人が睦まじくいるためには

愚かでいるほうがいい

立派すぎないほうがいい

立派すぎることは

長持ちしないことだと気付いているほうがいい

完璧をめざさないほうがいい

完璧なんて不自然なことだと

うそぶいているほうがいい

二人のうちどちらかが

ふざけているほうがいい

ずっこけているほうがいい

互いに非難することがあっても

非難できる資格が自分にあったかどうか

あとで

疑わしくなるほうがいい

正しいことを言うときは

少しひかえめにするほうがいい

正しいことを言うときは

相手を傷つけやすいものだと

気付いているほうがいい

立派でありたいとか

正しくありたいとかいう

無理な緊張には

色目を使わず

ゆったり ゆたかに

光を浴びているほうがいい

健康で 風に吹かれながら

生きていることのなつかしさに

ふと 胸が熱くなる

そんな日があってもいい

そして

なぜ胸が熱くなるのか

黙っていても

二人にはわかるのであってほしい

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

先生:「素晴らしい拍手

 

 

年美さん:「素晴らしいです。」

 

 

先生:「この祝婚歌をなぜ読み上げたかというと、この2・3日の間でたくさんのご相談を頂いていて、この詩の中のどれかの文章に答えがたくさん入っていると思ってこれを読み上げました。

 

この祝婚歌が大好きで、出会った時に身震いしたんだけど、この先生のもう一つ有名な【争う】というタイトルの詩があるの。最初の文字に【静】という文字が書いてあるの。二行目に【青空を仰いでごらん。青が争っている。】と書いてあるの。字を思い浮かべて。静かという字は青が争うと書くのよ。

 

次は【浄】。【流れる水はいつも自分と争っている。それが浄化のダイナミックス。
溜り水の透明は沈殿物の上澄み、紛いの清浄。】

 

つまり、静止している水が透明のようになるのは下に色んなものが沈殿しているから上澄みだけ。だから、綺麗に見えるのはまがいものだと言っているの。

 

【河をせきとめたダムその水は澄んで死ぬ。ダムの安逸から放たれてくる水は
土地を肥やす力がないと農に携わる人々が嘆くそうな】

 

つまり、ダムに水は貯めてあって、いろんなものが沈殿していて、上は綺麗だけれどそれはまがいもの。ダムを解放した水を畑に流しても畑は耕されない。だから流れる水はいつも自分と戦っている。それが浄化する浄という文字なんだという詩なの。」

 

 

区切りがいいのでこの辺でバイバイ

 

ご存知の方もいらっしゃると思いますが【争う】の詩の全文をご紹介したいと思います。

 

【争う】

 

 

青空を仰いでごらん。
青が争っている。
あのひしめきが
静かさというもの。

 

 

流れる水は
いつも自分と争っている。
それが浄化のダイナミックス。
溜り水の透明は
沈殿物の上澄み、紛いの清浄。

河をせきとめたダム
その水は澄んで死ぬ。
ダムの安逸から放たれてくる水は
土地を肥やす力がないと
農に携わる人々が嘆くそうな