望んだのはとても小さな事 | My Favorites

望んだのはとても小さな事

愛する人と畑を耕し、子を守り育て、いつの日か良い人生だったと互いの手を取りみまかること
そんな小さな夢が本当に「夢」だった時代があるのです

土曜日に観てきたもの「258」

何の予備知識もなく行ったのでパンフを見るまで明るい青春物だと思っていました
なになに?シュミット・カール・ベルツ…???
これはもしかするとドイツっすかぁ???
あーうーんーでもってぇ、あの時代ですよねん、うおりゃ

んでもーマチネを観た友達が「今すぐ来て!」とメールをくれた程の出来らしいのでドキドキドキ

するとなんとーー!!
当日券、いっちゃん端ですが1列目をゲット
…いわゆる「郷本さん視線ありがとう席」
とっても怖いお話なのにうっとりもしました、郷本さんステキすぎ
この時点で前の日に買った宝くじの落選は決定しました、まあ良しとしましょう

内容としてはナチス終焉期の会話劇です
特に郷本さん演じるシュミット
川野さん演じるダニエル
田中さん演じるベルツは長台詞ありで
できれば噛んではいやいやん、な緊張感溢れる舞台作り

長台詞しょっぱなは郷本さんですが、いや美声
声優さんもされているとのことですが、私、この方の声は劇場で聴くのが一番すばらしい気がする
囁くような台詞は特に
物語りの導入部分、「ここはドイツ」を観客に染み渡らせる大役を見事にはたされていました

囁きCD出たら買います、ぶるーしゃとるぅぅぅぅ

…は、置いておきましょう、ひとまず

さて、郷本さん
かなりおいしい役ではないかと思われる
腐女子的にもきっと「ありがとう」な役です

噂の女装シーンですが(あったんですよ、黒いスリップ+ガーター+リップのサービスが)
「でもね」こそ「おおおっ!」と思いましたけれど (^^ゞ
これ私、笑いのシーンではないと思います
なんていうか「真実」に通じる深い色気がありましたことよ
あの事件が「真実」であるからこそ、ラスト近く
「顔を怪我した」後の「鏡」「絶望」「ピストル」に通じる

カールに対する拷問も、えっとこちらは色っぽい…を通り越してエロいです
いや、ほめてます、マジで!!

でもそれよりエロいのがその手前
「ここに座りなさい」と椅子の背をなでる所
これにあの声がつくわけですから、とてつもないエロい

郷本さんは「言葉の拷問」系プレイ(←どんなだ?)やったら絶対勝てる気がします

シュミットに関して望むとすれば
いま少し、カールのミスリーディングを誘い、楽しむ余裕があれば尚良しだったかなと思われます


さて主役ダニエルを演じたのが川野直輝さん

最初の長台詞はなんていうか単調なリズムがあってどうしようかと「ちょっと」思ったんですが
(長台詞を長台詞と感じさせない郷本さんの「リズムの変調具合」はすばらしかった)
別荘にきてからの川野さんは実にステキでした
特に「拷問」を「認識」してからのダニエルにはこのヴィジュアルは必須なんだと思ったりもしました

最初ベルツと並んだ時も青年将校ではなく
どっからどうみてもヒトラー・ユーゲント
伝説的な狙撃兵というよりも、いたいけな少年兵
ベルツやシュミットの前で怯える様は
とってもいけないものを(楽しく)見せていただいている気分になりました
次回はぜひ皆川博子先生の世界を「カリアゲ」無しで見せていただきたいです
今回の川野さん、郷本さん、阿部さんは十分あの世界を再現できるヴィジュアルをお持ちでした


あとざくっと思ったことを述べると
リリーはダニエルよりものごっつ年上よね、とか
登場シーンが登場シーンなだけにローマンにはもっと伏線があるのかと思ったよ、とか

リリーのお腹の子は誰の子か?とか
リリーが手にした情報は決してダニエルから知り得られるような情報ではなく
リリーが本来ダニエルに近づいたのは上層部につながるためであった…というのを思えば
どちらの子であるかはわからない状況が想像できるのだけれど
戦争が終わった時点で確実に「父親」が生きていない状況も想像できるので
この場合「女がそうだと信じて育てられる方」を父親だと言い聞かせて育てていけばいいだろう、と思います

そして主人公ダニエルはきっと拷問を受けたから心が死んでいたわけではなく
257人もの人生をホロスコープでのぞきながら、ゆっくりと心を殺していたのだと思う

「ドイツの誇りある兵士」と「狙撃兵」とのギャップの合間で

彼がこれから戻る最前線は冬の嵐よりもきっと厳しい
そこにいるドイツの民は全員知っているのだから
彼の以前の「裏切り」と「卑怯さ」を

今度こそ愛する者と尊厳を守るために赴くのだけれど
彼はきっとどんな弁明もしないだろう

どうか、もうこんな戦いが、悲劇が、二度と起こりませんように
そう願わずにはいられない、そんな舞台でした