ドリアン・グレイについて考える | My Favorites

ドリアン・グレイについて考える

ライフの「ドリアン・グレイの肖像」を観た時
感情移入して一番辛かったのはシビル・ベインだった

シビルには薄汚い芝居小屋が全てだったの
生まれた時から世界はハリボテで出来ていた
だからどんなロミオやハムレットがきても大丈夫
所詮は夢うつつの世界だもの
今日はジュリエットでロミオに愛を誓い
明日はオフィーリアでハムレットに愛を誓う

でもある日、本物のプリンス・チャーミングに出会う
彼も私を好きだと言う
途端に見えてくる、ハリボテが
描割の家が、ついでいる衣装が

本物の王子を前に、どうして目の前のハリボテに愛を囁けるだろう?
彼女は演技ができなくなる
夢うつつの世界で生きていけなくなる
そして…手を放される

手を伸ばしても、プリンス・チャーミングは戻らない
昨日まで優しかったあの人はもう二度と戻らない
そしてハリボテの世界にも戻れない

いける場所はひとつしかなかった

…彼女の叫びで北千住に地震が起こったのも納得したよ \(--;)

反対に感情移入して楽しかったのはヘンリー卿の奥様

この夫婦、実はものすごく愛しあっていて
それがお互い認められればすごく幸せだったと思うのだけれど
たぶん、この時代のお貴族様の間では
「夫婦間で愛し合う」って、ものごっつダサかったんだと思います

なので、愛してる分だけがんばって他を見る
愛してる分だけ、出会わないようにがんばる

ある日、夫が隠し持っている美しい子の写真を見つける

その子が今うちに来ていると言う

近くで見てみたいじゃない?

こっそり近づいてみると、主人と私を間違えて文句など言ってくる

ふぅぅぅぅぅぅん、そぉなんだぁぁぁぁぁ

私だったらここで手の甲にキスなど所望
頭下げさせてみたいじゃない?

傍若無人な若者は私に意見などしたりする
でもそれって主人の意見の受け売りではなくて?
わたくし、主人の意見はお友達から聞くしかないのよ

そして心の中の宝箱にそれを貯めるの

どうもありがとう
主人の今までたくさんいたお友達の中の1人、ドリアン・グレイさん


…ここからは妄想

ライフの「ドリアン」の中ではヘンリー卿夫妻はその後別れたとしかないので(←読みなはれ)

ある日、その人に出会うのだ

まっすぐに「好きだ」と言ってくれるその人に

初めて耐えられなくなるのだ、他の人に微笑むその人に

抱きとめられる、「誤解だ」と走って追ってきてくれるその人に

そしてある日、あの日のようにヘンリー卿に言うのだ

「あなた、お願い事があってきましたのよ」

お別れしましょう
愚かでしょう、愛し合う夫婦になりたいなんて
でも、私はあの人の腕の中で目覚めたいの
そしてあの人の子供を宿したいの
たとえこの恋が明日消えてしまうとしても、今彼の横にいたいのよ

ヘンリー、あなたとそうなりたかったのに

ヘンリーも本当はそうだったのに


ラスト近く打ちひしがれている彼を見てそう思ったのだけれど

…なーんてことを思い出した昨日の観劇なのでした