普通にデートもしたと思う。
不思議なほど、記憶に残っていない。
主人の・・・・・
もう今は、「主人」とか「夫」と呼ぶのも辛い。
虚しい。
これからは「アイテ」でいいや。
アイテのご両親にも気に入って頂けて、
トントン拍子に結婚式を挙げた。
そのまま行ったオーストラリアへの新婚旅行。
思えば、ここからおかしかった。
行った先で、アイテは体調を崩した。
どうやら風邪をひいたらしい。
「慣れない土地で可哀想だな」
素直にそう思って、
知らない外国の街を一人で歩いて、風邪薬を買いに行った。
ホテルのタオルを濡らして、アイテのおでこを冷やしたり、
お腹に優しそうなものを買ってきて、
かいがいしくお世話をした。
2〜3日するとアイテも体調が戻り、元気になった。
アイテが寝ていた期間の楽しいアクティヴィティは全部
キャンセルになった。
「仕方ない」と思っていたから、その時はなにも思わなかったけど、
「オレのせいでごめんね」とか「看病してくれてありがとう」なんて
言葉はかけらも出なかった。
そして、セックスもしなかった。
不思議に思っていたけれど、私は自分から誘うようなタイプでも
なかった。
新婚旅行って、毎日のようにするんだと思ってたよ。
つきあっていた頃は、何回かしたけどな。
正直、あんまりいいとは思えなかったけど・・・
帰国する日、ケアンズ空港で相手の手をつなごうと手を伸ばしたら、
振り払われた。
すごく寂しかった。
体調が悪いのは仕方ないけど、色々我慢していた私の気持ちを
慮ることくらいはできないのかな?
そのときは、全部我慢していた。