(社説)文理融合教育をイノベーションの糧に

 

 

東京大学がユニークな教育課程を2027年秋から始める。

 

学部(4年)と大学院修士課程(1年)にまたがる5年制で、文系・理系の枠にとらわれず学べる

気候変動や生物多様性など地球規模での課題解決に活躍するイノベーション人材を育成するという。次代を担う高度人材の新たな育成の場として期待したい。

 

東大の新課程は1学年約100人で、半数は海外からの留学生を想定する。講義はすべて英語で実施し、学内の教授陣に加え、国内外から教員や企業人を招き指導にあたる。

 

現代社会が直面する課題の解決策を探りだし、イノベーションに結びつけるには、物理や化学、生物など自然科学系の知見だけでは不十分だ

 

ここで注目されるのが経済学、社会学といった新たな価値を創出する人文・社会科学系の知見だ。扱い方を誤ると人類や文明を脅かす存在となる人工知能(AI)やゲノム編集などのテクノロジーと上手に付き合うには、倫理学や哲学からの視点も求められる

 

学問は発展とともに細分化する傾向があり、専門分野に特化した視野の狭い「たこつぼ」型の人材育成に陥る。

 

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面白い動きだと感じている。

そもそも「リベラルアーツ」と呼ばれる幅広い知識を備えた技術者は少ないのではないだろうか。高度経済成長以来、日本では専門知識を深く知る人材が必要だったと思われる。

 

このニュースにあるように社会課題の解決は専門知識のみで解決できるような単純なものではなく、かなり複雑なものとなっている。この解決にリベラルアーツは不可欠と思われ、日本においてもその人材を確保(育成)すべきと感じる。

 

歴史を見てみると幕末には「塾」が多く存在した。鳴滝塾、松下村塾、緒方適塾、慶應義塾などだ。これらの塾は本来「医学」などの塾であったものの「技術を学ぶだけでなく幅広く社会を変える人材を輩出したい」としてさまざまな分野の議論が行われていた。

 

適塾から大村益次郎(村田蔵六)、福沢諭吉、松下村塾からは伊藤博文(伊藤俊輔)、久坂玄瑞、高杉晋作、山縣有朋(山縣狂介)などを排出しており、彼らは倒幕、そして明治以降の国づくりに大いに貢献した人物である。

その人間力はこれらの塾で大いに磨かれたと言っても良いだろう。

 

これまでの技術の深化に偏重した日本の技術開発では日本の未来は暗い。中国、インドなどに負けていくことは目に見えている。GDP4位の座すら危うい。

これを打破するために、今後の日本の教育はリベラルアーツ寄りの情報意識することが必要である。

 

日本企業の管理職の中には「専門知識以外は不要」とする人はまだ多い。その考え自体を変えていくことが日本には求められているかもしれない