新規事業への横槍はこう封じる 「両利きの経営」実現のための4つの要件とは
既存ビジネスの「深化」と新規事業の「探索」をいかに両立させるか?

 

 

世界最先端のイノベーション理論の体系的解説書『両利きの経営』(東洋経済新報社)のレビュー

 

どんな企業もこれまでやってきた事業の継続だけでは生きていけない。

新規事業への進出がない限り持続的な成長はありえないと誰もが気づいている。

 

ただ日本においてこれを成し遂げた企業は少ない。特に大企業では新規事業への転換(新規事業への進出)が進まないように思われる。

 

このレビューでは、新規事業への進出には両利きの経営が必要であるが、この遂行には以下の4つの要件があるとしている。

 

1.戦略的意図:戦略的に重要か? 組織能力は活用できるか?

2.経営陣の関与と支援:経営陣こそ覚悟を見せろ

3.両利きのアーキテクチャー:分離しつつ統合することで、いいとこ取りを狙え

4.共通のアイデンティティ:異なるが同じ、という絶妙なバランスを取る

 

1.は新規事業を検討しているもの(グループ)が正しく上位に伝える(主張する)ことが重要であろう。ただ、戦略を立案するためには企業があらゆる情報を提供する必要があると思われる。現業での経験、知見が使えない時に新規事業での戦略的意図を正しく立案することが難しく、これを立案するための手段が必要と思われる。

 

2.はこの4つの中でもっとも重要ではないかと思われる。現業を離れて新規事業に行く場合、必ず抵抗勢力が出てくる。「自分の顧客が奪われる」「自部門のリソースが取られる」「変化させたくない」などと保身が働き、全社的な立場でものを考えられない人が必ず出てくるからだ。

これに対しては上位は「反対者は排除する」という態度が必須と思われる。

 

3.に関してはすでに多くの名著で語られている。現業と同じ文化、プロセスで新規事業をしようとしたら多くのスタートアップに負けるはずだ。大企業ならではの「大きなリソースを提供」しつつ、新たなプロセスで進めることが重要だ。

 

4.は3.にも通じる。「異なる」が「目的は同じ」という考え方、共通認識が必要であり、これは理念を用いてその考えを醸成するべきであろう。

 

多くの企業が上記の事実には気づいているだろうが、抵抗勢力(保守的勢力)の勢いを止められないことが多いと思われる。

上述のようにどうしても「新しいことに反対する」人は多いからだ。

 

このために2.で示した経営陣の覚悟が重要であるが、それとともに新事業を全面的に支援する仕組みを作っておくことが重要ではないかと思われる。

この仕組みは明文化、組織化が必要であり、誰の目にも見えるものが必要であろう。

 

日経平均株価が過去最高値を更新した今、儲けの面でも日本経済の成長を実感するために是非とも両利きの経営で将来の「強い日本」を作っていきたいものである。