イノベーション起こすには
慶応義塾大学教授 土居丈朗

 

 

2024年度の税制改正大綱では「イノベーションボックス税制」が作られた。これは特許などの知的財産から得られる所得の税負担を軽減するものである。

企業の無形資産への投資を促すことが目的である。

 

日本企業でイノベーションを自治右舷している企業は32%(2019-2021年)で上昇傾向にある。ただ、この数値はOECD(経済協力開発機構)各国と比較して低い。特にカナダでは83%の企業がイノベーションを実現している。

 

問題点はいくつかあるが主に下記が挙げられる。

 

①デジタル化の遅れ

②無形資産投資の不足

③研究開発の近似性が高い

・研究開発が硬直化している

・競争力を構築する戦略と研究開発が乖離している。

 

研究の硬直化には雇用保護が強すぎることも指摘されている。

変化を過度に懸念することは好ましくないともしている。

 

 

上の図:研究の近似性を米国と比較した図

・日本の35歳(企業年齢)は米国の85歳と同等

→「若くして頭が凝り固まっている」という状況

下の図:利益の大小と研究開発の近似性

・米国:稼いでいる企業は研究の近似性が高い

・日本:利益にほぼ関係なく研究の近似性は高い

→米国では収益力が小さい企業は柔軟に研究領域を変化させている。

 日本は収益が低くても硬直的にいつまでも同じ研究を継続している。

 

【ここから思い描く未来】

日本のこれまでの経済成長においてその付加価値は「多機能」「高品質」であったが、モノが国民に行きわたり、また価値観が多様化する現代では、これまでのと同じやり方では生き残ることは困難であろう。

 

今後は「既存事業の深化」のみで生き残っていくことは困難で、「新規事業の探索」が重要になってきた(両利きの経営:ambidexterity)

 

研究開発部門はそのポートフォリオを認識し、その変化を認識すべきであろう。

また成長戦略にあったポートフォリオ変化を柔軟に行うことが必要であろう。

 

ただ、人は「変化」を嫌う。今までのやり方、今までの常識が変化を難しくするからであろう。「今までと同じ」は楽であり、変化には大きなエネルギーを必要とする。ただ変化しないと破滅に向かうことは自明であろう。

社会の変化に適応したものだけが生き残る。できればその変化を主導できれば日本の生き残る道はあるだろう。

 

It is not the strongest of the species that survives, nor the most intelligent that survives. It is the one that is most adaptable to change.
―― Charles Darwin

 

「生き残るものは強いものでもなく、賢いものでもない。ただ変化に適応できたものだ」ダーウィン

 

変化を嫌う人たちのPDCA(横河電機 阿部 剛士氏)

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