南の太陽が濃く降り注ぐ夏、韓国・全羅南道の霊岩(ヨンアム)の野には、風に揺れる青々としたモシ畑が広がります。風が通り過ぎるたびに淡い緑の香りが漂い、人々の手は忙しく動きます。モシ(苧麻)は長い年月、南道の暮らしを包んできた織物の原料であり、同時に食文化を彩る素材でもあります。その葉を粉にして生地に練り込み、ひとつひとつ丁寧に形づくったものが、霊岩の誇り「モシ松餅(モシソンピョン)」です。
普通の松餅とは一味違い、真っ白な米粉の生地にモシの葉を加えると、ほのかな青みが宿ります。一口かじれば、爽やかで少しほろ苦い草の香りがふわりと広がり、中には香ばしいゴマと甘いハチミツが調和して、口の中いっぱいに豊かな味わいが広がります。もっちりとした食感とつるりとした舌触りは、子どもの頃のお月見を待ちわびた気持ちを思い出させてくれます。
私が初めてモシ松餅を味わったのは霊岩の市場でした。木の蒸籠から出したばかりの松餅は、温かい湯気を立てながら素朴な器に盛られ、指先に伝わる感触は柔らかく、頬をかすめる湯気は心地よい温もりを帯びていました。その瞬間、ただの菓子ではなく、この土地に受け継がれてきた時間と真心の結晶であることを実感したのです。
モシ松餅は華やかではありません。けれども一口ごとに込められているのは、南道の陽射し、畑を耕した人々の汗、そして祖母の手から伝わるぬくもりの味です。だからでしょうか、モシ松餅を口にすると、心がすっと澄み渡り、懐かしい想いが甘やかに広がります。
秋の夕べ、丸い月を眺めながらモシ松餅をそばに置けば、故郷や家族、そして過ぎ去った日々の記憶までもが静かに重なり合います。霊岩の青いモシ畑から生まれた小さな餅は、やがて私たちの心をひとつに結ぶ縁(えにし)の糸となるのです。
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