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たびげいにんのこや

備忘録として、色々なことを書き綴ります。

ネットの世界に初めて旅立ちました。

※2013年2月頃?に思ったこと。


 ドンキホーテ・ドフラミンゴ。初登場から何年も過ぎ、その後数回の出番のみで、その素性については、七武海であり裏の世界の黒幕的存在でもあるということ以外には殆ど情報が明らかにされていなかった男。その彼がここにきてようやく表舞台に姿を現してきている。読者の期待と不安と共に、ようやく麦わらの一味との接触が実現しようとしている。

 

 作者の、ドフラミンゴに対する扱いは尋常ではない。海賊王ロジャー、赤髪のシャンクス、黒ひげ、白ひげと並ぶ最重要人物の一人と考えて良いと思われる。彼の出番は数回のみであったが、その度に彼が口にする台詞の求心力は並外れており、大いに期待を煽るものであった。今後作品が面白くなるかどうかは、最強の能力を二つも手にし、強大な野心を持ち、新世界の覇者へと上り詰めようとしている黒ひげと、そして、このドフラミンゴにかかっていると私は考える。その点で、とにかく格好良い姿ばかりが描かれ、ルフィ達の憧れ・目標であり先導者であること以外には今のところ存在意義を示していないシャンクスや鷹の目のミホーク以上に重要である。


 赤犬を初めとした海軍や世界政府の面々は、ステレオタイプな絶対悪(絶対的正義という名のスローガンを掲げた皮肉として)であり、倒すべき存在として益々その存在を強めていくだろうが、黒ひげとドフラミンゴは、悪役として少々異なった役割を与えられている。それは、物語をかき回すトリックスターとしての役割であり、文字通りジョーカーであり、その立ち位置や思想の差異によって作品は面白くもつまらなくもなりうる。物語のの対立軸として、また善と悪の境界線上を縦横無尽にかけ回る存在として間違いなくキーパーソンなのである。


 全てはモックタウンから始まった。空島突入の前に起こった、ただの空島編のプロローグかと思われたモックタウンでの出来事は、今では作品の主題・核心に迫るシークエンスであったことが徐々に認識されつつあある。作者は一体何を描きたいのか?それをこのモックタウンでの出来事とその後の展開から読み解きたい。


 麦わらの一味は、モックタウンで二人の人物と接触する。一人はハイエナのベラミー。ベラミー海賊団の船長である彼は、空島という未知の世界の存在を信じるルフィを否定し、あざ笑う。海賊が夢を見る時代は終わったと言った人物である。


 もう一人が黒ひげである。黒ひげは、ベラミーから嘲笑を受けたルフィに対し、空島は存在すると断言し、海賊が夢を見ることは終わらないと高らかに宣言する。後に彼は、自らの野心からルフィの首を狙うことになるのだが、この時点ではルフィの信条や夢と共振していたのだ。


 そして空島編のクライマックスの後に、あの男が現れる。ドンキホーテ・ドフラミンゴだ。ハイエナのベラミーはドフラミンゴの傘下の海賊であったのだ。ドフラミンゴは、麦わらのルフィに敗北したベラミーを用済みとみなし粛清する。そして「時代は“スマイル”だ」という謎の言葉と共に、弱肉強食の新時代がやってくると言い放った。この時点で読者は、ルフィや黒ひげはワンピースを目指す夢を持った海賊であり、一方でベラミーとその黒幕であったドフラミンゴは、それを否定するような新たな価値観の下での覇者を目指す存在として認識されていた。


 しかし、ここにきてその認識を揺るがす出来事が起こった。2013年最新号において、ドフラミンゴの部下として新たに登場していたキャラクターが言った一言がそれである。若様(ドフラミンゴ)は海賊王を目指すお人です――。なんとドフラミンゴもまたルフィや黒ひげと同じ、海賊王を目指す人物であったのだ。海賊王とは、かつてのゴールド・ロジャーの呼称であり、彼の残したワンピースを手に入れたものが、新たな海賊王、海賊の覇者とされるものだ。これまではドフラミンゴの目標が海賊王になることというのは明言はされていなかった。(ただし、ドフラミンゴもまたワンピースを狙う人物なのかどうかについては、かつてのルフィの言葉によって曖昧なものとなっている。ルフィはこう言った――この海で一番自由な者が海賊王であると。その真意についてはまだまだ図りかねる部分も多いので、この段階ではワンピースを手に入れることが主要な海賊達の目標であると考えて話をすすめる。作品の中では、どうやったらワンピースを手に入れることができるのかについては、まだ明確になっていない。グランドラインの最終地点・ラフテルに存在すること以外には情報は伏せられている。ロジャーの一団以外はその地にたどり着いた海賊が未だに存在しないのだ。富・地位・力・名誉といったものを殆ど手にしている白ひげ、シャンクス、ドフラミンゴにしても、未だにたどり着いていない場所にワンピースは存在する。)


 ワンピースという作品は、ワンピースを目指す海賊の物語と、世界の覇権を争う海賊と海軍の抗争の物語という、二つの物語が並行して語られる作品だ。ルフィは前者の、そして白ひげ、シャンクス、ドフラミンゴは後者の物語に属すると思われる人物だ。黒ひげは、その両方に属する野心家である。それが、ドフラミンゴもまたワンピースを狙う人物であることが明確になれば、二つの物語は一気に混ざり合い、作品も核心へと迫っていく。何故か?


 ここで私の最大の疑問を述べたい。ドフラミンゴは、何故未だに七武海の地位にいるのか?七武海とはつまり政府の犬だ。かつてのイギリスの私鯨船がモデルであるように、政府によって海賊行為を合法として認めらた者達である。黒ひげは、ルフィの兄・エースの身柄と引き換えに七武海に加入したが、その直後に大監獄インペルダウンの極悪な囚人を解放すると共に味方に引き入れ、海軍本部における頂上戦争に殴りこみをかけ、白ひげを倒しその能力を奪うという行為に至って、あっさりと七武海の地位を捨て去ってしまった。言うなれば黒ひげにとって七武海の地位は力を獲るために利用したのみであり、踏み台でしかなかったのだ。彼が信じるものは、天命と自らの運と力のみであり、政府から与えられた地位に対しては利用手段以上のものとは考えていなかったのだ。だがドフラミンゴは違う。未だに七武海の地位におり、更には政府上層部とも裏では密接につながっている。どのような合意、または契約の下で彼が政府上層部とつながっているのかはわからないが、ドフラミンゴ自身、政府を利用し、政府もまた彼を利用している。ドフラミンゴが海賊王を目指していることを政府がどこまで見抜いているか、もしくは自明のこととしているのかはわからないが、現時点では利害が一致しているのである。ドフラミンゴは、七武海という地位に、政府にまだ利用価値があると考えている。ならば、今後どこかでその利害や合意に矛盾が生まれてくるかもしれない。その時、ドフラミンゴは裏切るのだろうか。それともそれを更に越えて、世界の転覆すらも視野に入れているのだろうか。そうなれば、ドフラミンゴもまた、海軍・赤犬と闘う局面が現れるかもしれない。彼はルフィにとって、倒すべき悪でなく、倒すべきライバルとして活躍していくのかもしれない。


 ルフィ、黒ひげ、ドフラミンゴ、この三人は同じ目標を持ちながら、全く違うやり方で海賊王を目指している。かつて白ひげが今際の際に黒ひげに対して、ロジャーが待っている男はお前ではないと言った。おそらくそれはルフィのことになるだろう。ルフィは海賊王になるだろう。だが、その行程が難関であればあるほど作品は面白くなる。ならば、ライバルとして黒ひげやドフラミンゴが海賊王に近づけば近づくほど作品は盛り上がるはずだ。同じ目標を持ちながら、異なる主義・思想を持つこの三人が、ワンピースという作品の核心にいて、物語の強度を支えている。