闘魂といえばアントニオ猪木だが、

中内功(ダイエーの創業者)の没後に書かれた本の中で、
明治以降の日本の歴史について、滾々と語る印象的なインタビューを目にし
ずっと気になっていた人の自伝がこれ。

闘魂 人生必勝の道―日本一の食品スーパー「ライフ」を築き上げた男/清水 信次
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三重県津市の綿花・タオルを商う、苗字帯刀御免の商家に生まれたが、
第一次大戦後の不景気による連鎖倒産で、大阪に転居し、
借金取りと南京虫に毎日のように襲われる生活に。
天真爛漫で志が高いが、日米開戦の際に、父親に疎開をすすめてしかられるほど冷静で、
徴兵招集を受けるも、一番死ぬ確率が低いと思って、鉄道隊に配属されるが、
米軍上陸に備えて、戦車めがけて地雷をかかえて飛び込む訓練中に敗戦。

復員後は、三重県の養蚕小屋に疎開した家族を立て直すべく、
支給金200円と飯ごうや水筒などの支給品を売り渡した千数百円を元手に、
三重と大阪を往復する鮮魚の闇屋から、
売上高4600億円、店舗数209の日本一の食品スーパー、
ライフコーポレーションを築き上げる。


闇商売を取り締まる警察に摘発されかけた時、復員した兵士に肩入れした群衆に、逃亡させてもらい、
学生時代の友人・恩師たちや商売途上で出会う人達との出会いを、”出会いとはチャンスである”と
持ち前の胆力・行動力から次々と好縁にし、
朝鮮戦争が始まると、大阪での成功を”小成”として、単身東京に進出。
外国商社や政府と直接輸入物資について、交渉し、
その後も多くの困難をくぐり抜け成功し、ライフコーポレーション会長として一旦、
弟に社長職を譲るも、バブル経済によるマネーゲームで正業を見失い、海外進出を
すすめたその弟を、取締役会の僅差の議決で解任し、
以後は、自ら外資小売り業の進出と大店法の出店規制を読みながら、
怒濤の出店で、現在の地位を築いた。

終盤は、消費税(旧・売上税)導入時も、反対を主導し、産業界などからにらまれるも、
政治家・役人が志をもっていた時代を、回顧しながら、
現在(出版は2001年)と21世紀の日本について金言と箴言を、懐深くかつ鋭く放つ。
「大国でもなく強国でもなく”良国”」。明治維新、第二次大戦につぐ”3度目の生まれ変わり”と
する主張は、刊行後10年近い現在も同じなのだが、まるで、存在を煙たがられているかのように
目にする事は少ないのは、小売業に対するある種の蔑視なのだろうか。
日経文庫等で、復刊を希望したい。

成長期・バブル期も、新店舗の土地の値上がりを原資とし、過剰な多角化、身内で固めたダイエーと
は結末を異にしたのは興味深い。


なお、パインちゃんとは、戦後の日本のパイナップル輸入の核となり、輸入協会を赤坂の料亭で
組織するも、政・官・財の大物たちには、まだまだ若輩だった著者が、料亭の女将さん・仲居さんに
可愛がられ、お礼とばかりにパイナップルを配ったからついた通り名(あだな)だそうです。