ロックンローラー佐野元春の脳内には、ありとあらゆるタイプの音楽が畳み込まれている。スケールの大きなストーリー性のあるロックからソウル、ラップ、ポエトリー・リーディングまで何でもありだ。そのすべてがソリッドでクール、かっこいいのだが、僕が特に好きな佐野の音楽は、自らピアノを弾きながら、呟くように歌うバラードである。それは佐野の生身に近い「個」を感じさせるものだからだ。
彼女
男の男による男のための失恋のソング。あまりにも切ない。詞もメロディもボーカルもピアノも極上のものだ。佐野のピアノはテクニックが優れているわけではないが、イノセンスの表現が素晴らしいのである。
(抜粋)
きのうまで話していた
恋人とは思えない
彼女のキスはまるで
氷のように冷たい
風が吠え始めて
街の顔がうつろってゆく
このまま闇の中に
溶け込んでしまいそうだぜ
流れてゆく
変わってゆく
街のざわめきを後にして
流れてゆく
変わってゆく
燃える夜を貫いて
彼女を愛してきた
耳に残るささやきは
幻のように消えてゆく
ドラマSPECと佐野元春
SPECの主人公は戸田恵梨香が演じる当麻紗綾(とうま さや)だったが、その父親役を演じたのは、なんと佐野元春である。もちろん佐野にとって初めての俳優の仕事だ。そして、「劇場版SPEC~結~」のラストに使われた音楽は、「彼女」だった。そういった情報を知らずに映画を観たものだから、「彼女」のイントロのピアノが聴こえた瞬間、驚愕のあまり、心拍数が一気に201まで上昇した(笑) 201というのは、当麻紗綾のIQである。地球を救うことができるほどの超能力を持っているうえに、どれだけアタマがいいんじゃ! SPECのストーリーと「彼女」の詞はまったく無関係だが、妙にマッチしていた。生死不明の当麻の身体が宙に浮いている時に「彼女」が流れるというラストシーンで、泣いた人は多かったようだ。ぼくも涙が止まらなかった。それはとても不思議な化学作用だったと思う。
SPECでの佐野元春
君を待っている
目の前でこの曲を歌われて、心と体の奥で「じゅん」とこない女性はいるのだろうか?
歌う人にもよるって?
ごもっともです(笑)
(抜粋)
寄りかかる
ところもなく
ひとりの夜に
おびえているならば
過ぎたことは
すべて忘れて
いつでもここに
伝えてほしい
昔のままのその声で
夏がきて
冬がきて
新しい愛に
あてがはずれたなら
思いだして
ここにいることを
暖炉に火をくべて
君を待っている
いつまでだって
かまわない
こんなに心の広い、
器の大きな男はいるのだろうか?
結果をすぐに求めないのだ。
半年経とうが、一年経とうが、
新しい彼ができようが、失恋しようが、
いつまでも君を待っているのだ。
自分は変わらないと言っているのだ。
ぼくはそうなれる自信が……ない(笑)
次回は佐野元春のメイン要素であるビート詩人、現代詩との関わりを持つ佐野元春について考察したい…と思います。
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