「みなさ~ん、聞いてくださ~い!」
ビールケースに乗った彼は大声で叫んだ。だが、誰も彼の声に耳を貸さなかった。こんなに多くの通行人がいるにも拘わらず、みんな見て見ぬふりをして通り過ぎていく。
……どうせ頭のおかしいやつが訳の解らないことを叫んでるだけだろう。
ほとんどの人はそう思っているに違いない。私もそのひとりだった。だが、何を喋り出すのか、興味というか、好奇心はあったので、少し離れた位置からしばらく観察することにした。おそらく同じ好奇心を持った人たちだろう、遠巻きに見ている人が3人ほどいた。
「いまぁ、地球はぁ、たいへんな危機に直面しています! あと1年以内にぃ、人類はぁ、絶滅するのです!!」
……なんだ、このところよく聞く非科学的な陰謀論かなにかだな。それとも今TVでやってる「日本沈没」の影響を受けたのか。
遠巻きに見ていた3人の男たちはゲラゲラ笑っている。おそらく突拍子もないそんな話を聞いても、ほとんどの人は笑うか、冷ややかな目をして通り過ぎるだけだろう。
「その原因はぁ、新型コロナよりもっと強力なウィルスが世界中に蔓延するからです。そのウィルスは新型コロナと同じで、人工ウィルスなのです。それは地球を滅亡させるために○国が開発したものなのですぅ! 致死率は90%以上という……」
……なにをバカなことを言ってるんだ、こいつは!
「原爆はぁ、落とされたのではなくぅ、打ち上げられたのです! 空中で爆発してぇ、死の灰が降り注いだのです!」
……なんだと!! 被災者を、国を、貶めるつもりか?! 私は怒りに震えた。
その時だった。突然、周辺が暗闇に包まれた。
……いったいなにが起こったんだ?
(続く)
