短編小説 彩海7 | 秋 浩輝のONE MAN BAND

秋 浩輝のONE MAN BAND

はじめに言葉はない

「彼は……彼は私の父なの」

「はぁ…父?  彩海のお父さん?  嘘だろ!? どう見てもお父さんという年齢じゃないし」
「義理の父。血は繋がってない。母の再婚相手で、母より18歳年下なの」
 
「ほんとうのお父さんは?」
「私が小学生の時、事故で死んじゃった」
「そうだったんだ。新しいお父さんが来たのはいつ?」
「父が死んでからすぐだった。たぶん、母は、父が生きていた頃から、義父と浮気してたと思う」
 
「お母さんはどんな人?」
「私のことはほったらかしで、次から次へと、新しい男を連れ込んでた…とんでもない馬鹿っ母。父は真面目な人だったし、あまりにも可哀想だった……」
 
「お義父さんは?」
「裏の世界の人。ヤクザ。私、小学生の頃、義父に無理やり犯されて……」
「なんだって!?」
「母はそのこと知ってたはずなのに、何も言わなかった……」
彩海はそこまで話すと、ボロボロ泣き始めた。
……どこまで酷い親なんだ。人はどこまで人の尊厳を踏みにじることができるんだろう。俺は怒りに震えた。
 
「お兄さんは?」
「兄は実の兄よ。4歳上。私の味方は兄だけ。兄はいつも自分の無力さを恥じていた。でも、あの義父の前では、どうすることもできなかったし、仕方がなかったのよ」
「今日、待ち合わせに行けなかったけど、連絡あった?」
「うん、LINEが入った。心配掛けたくなかったから、『急用があって行けなくなった』と返しておいた」
 
「そうか。あと、言いたくないかもしれないけど、AVのことは…」
「私……義父に売られたの。裏社会の人だから、その業界にも通じていて…」
「親が子供を売るなんて、もう鬼畜としかいいようがないな。借金は?」
「会社から、おまえを売り出すには金が掛かる。150万円ほど用意しろと。そんなお金はないと言ったら、じゃあ、貸してやるから、毎月少しずつ返せと言われた。初めのうちは返していたけど、お給料少ないし、そのうち返せなくなってしまった。でも、プロモーションなんて、ほとんど何もしてくれなかった」
「あくど過ぎる! そのうえ、まだむしり取ろうとするのか! どこまで女を食い物にすれば気が済むんだ!」
地獄はずっと続いているということだ。あまりの壮絶さに俺の怒りは頂点に達した。
 
「そんな理不尽な金は返す必要なんかないっ!」
「兄は告訴すべきだと……今日会うのは、弁護士も同席して、その話をするためだったの。私の動向が会社に漏れたのかもしれない。襲われたのは、会社からの脅しじゃないかな」
「そうだったのか……。警察に言えばよかったのに」
「何の証拠もないし、警察は取り合ってくれないと思う」
 
……くそっ! どうすればいいんだ! 
このまま何もせずにはいられない!
 
(最終話に続く)