3枚目のアルバム「Windless Blue」のラストに入っている曲で、
飾り気のない声をピアノに乗せたシンプルなバラード。
シンプルといっても、効果的な移調もあり、かなり複雑な構造を持つ。
詞といい、曲といい、とてもしたたかに洗練されている佳曲だ。
少しだけの荷物
もしも幸せを計ることができるなら
積み重ねた新聞の高さなのかもしれない
もうすぐ君もこの部屋を出て
新しい生活が始まる
住み慣れたこの部屋に
慣れ過ぎたその時が
いつかは来ることもわかってはいたけれど
愛し合ってたあの頃のふたりは
けんかもできたのに
この頃 君はとてもやさしい目をしてる
愛し合ってたあの頃のふたりに
一日はすぐに暮れたのに
この頃 時はぼくの回りで止まっている
別れの詞だが、ある情景が思い浮ぶ。
愛し合っているからこそ、けんかもできた時期もあったのだろうが、
関係性が一定のボーダーラインを越え、絶望しかなくなると、
怒りという感情が麻痺して、けんかもしなくなってしまう。
その結果、「君」はやさしい目になっていったのは、痛いほどよくわかる。
「君」の心は醒めて、憐憫、諦観などが入り混じった複雑な思いなのだが、
「ぼく」は、まだ「君」を愛しているので、ひとりだけ前に進むことができない。
「この頃 時はぼくの回りで止まっている」
という文言から、その気持ちを窺うことができる。
だが、そこまで気持ちがすれ違ってしまうと、もう終焉しかないのだ。
終焉には儚い美しさが漂う。
この曲の美しさはそういうものである。
タイトルの「少しだけの荷物」とはなんだろう
「ぼく」だけが背負っていかねばならない
まだ燃え燻っている「君」への恋情なのだろうか
