ELP5枚目のアルバム「Brain Salad Surgery」
1973年の最盛期に作られたアルバムであり、最も人気が高いアルバム。メインは組曲「悪の教典#9」だろうが、小曲もたくさん収められている。その中で、クラシックからの引用はアタマの2曲「聖地エルサレム」と「トッカータ」。良い意味でも、悪い意味でも、「よくこんな曲やるよな~」というのが僕の印象である。言い方を変えれば、「なんでもありのELP」「恐いものなしのELP」という感じだろうか。
Jerusalem(聖地エルサレム)
イギリス国民なら知らない人はいないと言われるような有名曲。国歌「God Save the Queen」と同等の扱いを受けているらしい。おそらく日本よりも、おカタいと思われるイギリスの放送局は、ロック・バンドごときが、この偉大な曲を下品にアレンジするのはケシカランと、放送禁止にしてしまった。当のELPは深く考えず取り上げたのだと思う。キース「グレッグの声に合ってるし、いっちょやってみるか~」くらいの軽いノリだったはずである(笑)
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Jerusalem
And did those feet in ancient time
Walk upon England's mountains green
And was the holy lamb of God
On England's pleasant pastures seen!
And did the countenance divine
Shine forth upon our clouded hills?
And was Jerusalem builded here
Among these dark satanic mills?
Bring me my bow of burning gold
Bring me my arrows of desire
Bring me my spear o clouds unfold
Bring me my chariot of fire!
I will not cease from mental fight
Nor shall my sword sleep in my hand
Till we have built Jerusalem
In England's green and pleasant land
古代、あの足たちが
イングランドの山の草地を歩いたというのか
神の聖なる子羊が
イングランドの心地良い牧草地にいたというのか
神々しい顔が
雲に覆われた丘の上で輝き
ここにエルサレムが建っていたというのか
こんな闇のサタンの工場のあいだに
我が燃える黄金の弓を
渇望の矢を
群雲の槍を
炎の戦車を与えよ!
精神の闘いから僕は一歩も引く気はない
この剣を僕の手の中で眠らせておく気もない
僕らがエルサレムを打ち建てるまで
イングランドの心地良い緑の大地に
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エルサレムは中世詩人ウィリアム・ブレイクの詩、それに近代作曲家サー・チャールズ・ヒューバート・ヘイスティングス・パリーが曲をつけたものである。曲がつけられたのは第一次世界大戦の頃で、国威、あるいは戦意高揚の目的があったらしい。だがブレイクは、そういう意図で詩を作ったわけではなく、権威や権力に負けない自由な精神の有り方を表現したものだと言われている。
Jerusalem & God save the Queen / Last of the Proms 2012
イギリスではBBCが主催するPromsというクラシック音楽のイベントが毎年夏、8週間に亘って行われる。その最終夜に、Jerusalem、God save the Queen、威風堂々などが演奏されるのだが、これは、2012年の最終夜の様子である。
Toccata(トッカータ)
Toccata / ELP 1974.4.6 California Jam
原曲はキースお気に入りの現代音楽作曲家アルバート・ヒナステラの「ピアノ協奏曲第1番第4楽章」である。キースはこの曲の使用許可をヒナステラに手紙で依頼すると、快くOKの返事が返ってきたそうだ。ヒナステラは、「キース・エマーソンくんは、ワシのピアノ協奏曲をビューティフルにアレンジしてくれたのよね」と、一筆寄せてくれたとキースは言っている。そういえば、アルバム・ジャケットにその一文が載っていたような(笑)
初めこの曲を聴いた時、原曲がピアノ協奏曲とは信じられなかった。エレクトロニクスの発達を体現するが如く、キースはピアノを使わずシンセを弾き、カールがシンセ・ドラムを、グレッグがシンセ・ベースを、実験的に導入していたため、全体的にシンセ・サウンドというイメージが強く、ピアノ協奏曲の雰囲気がまったくしなかったからである。
Piano Concerto No.1 4th Movement
ELPのアレンジを聞いたあと、こちらの原曲を聴いて納得した。まるでピアノを打楽器のように扱ったこの曲は、バルトーク以上にパーカッシブ、エキセントリックだ。そしてキースはヒナステラの影響をモロに受けているのがよく解る。この4楽章はトッカータの原曲だが、キースのピアノ協奏曲第1番3楽章トッカータ・コン・フォコに非常によく似ているのだ。これは新しい発見だった。