僕の心動が長い眠りから目覚めようとしていた頃、
初めて君の生の姿を見たような気がした
すらりとした長い脚にジーパンがよく似合っている
そんな君を見たのは、或る日の夜中だった
僕は校庭で作業をしていて、君はおにぎりを差し入れてくれた
その頃、僕は高校最後の文化祭の準備に忙しく動き回っていた
大人になる少し前の僕たちはみんな、
卒業までの残り時間を惜しむかのように本音をさらけ出していた
普段喋るのが苦手な僕でさえ、君にぎこちなく話し掛けていた
僕の心動がやっと体内に響き始めたのは、
おそるおそる君に交際を申し込んだ時だった
君は女神のような微笑みを僕に向けてくれた
やがて、僕たちは約束したわけでもないのに、
授業が終わると、一緒に下校するようになった
つかの間の幸せに、僕の心動は全身に響き亘った
でも、何のプランも持たなかった僕たちは、
それ以上の「デート」を体験することもなく、
ふたりの関係は自然に消滅していった
一年後、僕の心動は体外に出ていった
それはマイクを通して、外に響かせるスベを覚えたからだ
喋るのが苦手な僕がなぜかDJになっていた
そしてギターという自己表現のツールを手にした僕は、
たくさんの人たちの前で大声で歌い、
ギターの弦を掻き毟っていた
久し振りに君と偶然会った
そんな僕の変化に君は驚いていた
「今のあなたが高校時代のあなたなら、
どうなっていたかわからないな・・
だって、今のあなた、あの頃よりもずっと素敵で輝いているから…」
君はそう言い残すと、新しい彼と共に去っていった
(了)