「ペイ・フォワード」

この映画のテーマは「赦し」と「自分が駄目だと思っている君、そんなに駄目じゃないよ」

ではないでしょうか。

ラスベガスの郊外に住む中学生になったトレバー、母と二人で住む地域はまるで世界の果てのような荒涼とした街。

酒をやめると約束しても手を出してしまうアルコール依存症の母親をトレバーは嫌っています。
ある時そのことで口論し、「母親失格だ!」と言われ、息子をぶってしまいます。彼はショックを受け、家出するのですが、夜中に担任に電話して一緒に探しに行きます。その時のセリフ。

「ごめんなさいね、友だちはみんなアル中だから。実は私もなんだけど」

「でも克服しようとしている」

それを聞いた母親は思わず涙ぐみます。
彼女はずっと自分を駄目な救いようのない人間だと思っていたのでしょう。それが初めて肯定されたのです。

バスの待合室にいたトレバーに母親が、

「もし、あなたが私のそばにいて、ママ大丈夫、きっとやめることができると信じてくれたら、やめられると思う」

と泣きながら言うと、二人は抱き合います。

担任のシモネット先生の壮絶な過去も明かされます。
ラストシーンは「フィールドオブドリームス」を想起させますね。

先生がトレバーに言う「貧乏くじを引いたな」

「you drew the short straw」

短いわらを引く=慣用句です。

「俺の汚い言葉を許してくれ」

「sorry my French」

俺のフランス語をすまん、というのは昔から英仏の確執から来ているそうです。

「ギフテッド」

7歳のメアリーは叔父と片目の猫と暮らしています。メアリーは叔父の姉の子どもなのですが、メアリーにとってのその母親は世界的な数学者でしたが、自殺してしまいます。祖母もケンブリッジ大卒の数学者であり、メアリーもまた数学の天才(ギフテッド)です。
ゴミ箱に捨てられた猫のフレッドを拾った時は既に片目でした。

実の父がメアリーを探さなかったことにショックを受け、「私に会いたくなかったのね」と泣きじゃくります。

叔父は彼女を大病院に連れていき、子どもが生まれた時の家族や親戚の喜びを見せます。

「私が生まれた時もみんな嬉しかった?」

「もちろん」

「誰がみんなに知らせたの」

「俺だよ」

その時の彼女の嬉しそうな顔!

叔父は「心配するな、俺たちはずっと一緒だ」

「約束する?」

「約束する」

しかしメアリーの才能を伸ばすために里親に出します。それは叔父にとって苦渋の選択でした。
メアリーが12歳になったら、里親か叔父を選択できるのですが、メアリーは叔父と離れて暮らすことなど考えられません。

「約束したのに!」

子どもにとっては大人との約束は絶対です。

メアリー役のマッケンナ・グレイスの演技は自然で素晴らしい。怒る、泣く、笑う、鳥肌が立つほどです。既に大女優です。

叔父が運転する車の中で彼女が

「フレッド、フレッド、フレッド!」

と愛する猫のフレッドの名前を連呼するシーンは私は大好きです。

「家の玄関に誰かいる」

「誰だ?」

「知らない。私7歳だし」

「ああ、お前の祖母だよ」

思わず

「Holy S○○○!」

7歳なのに…

1時間40分の短い映画ですが、歯を食いしばっても涙が溢れてきます。

いつまでもいつまでも心に残る映画でした。