「民族浄化」(Ethnic Cleansing)
ボスニア紛争における、有名なキャッチフレーズ。
ロングマン英英辞典では、こう記されています。
「1.あるグループの人々を、その人種や宗教を理由に、
通常は力によって、また時には彼らを殺すことによって
ひとつの地域から移動させること
2.この言葉はボスニアでの戦争を通じて有名になった」
この「民族浄化」という言葉がなければ、
ボスニア紛争の結末はまったく別のものになっていたと。
この仕掛けをしたルーダー・フィン社のハーフ氏は語ります。
「私たちの仕事は、一言でいえば、"メッセージのマーケティング"です。(中略)
ボスニア・ヘルツェゴビナ政府との仕事では、
セルビアのミロシェビッチ大統領がいかに残虐な行為に
及んでいるか、それがマーケティングすべきメッセージでした」
ルーダー・フィン社は、アメリカの大手PR企業。
PR企業とは、さまざまな手段を用いて人々に訴え、
顧客を支持する世論を作り上げることで、
CM、新聞広告はもとより、メディア、政界、官界の
重要人物に働きかけ、政治に影響力のある圧力団体も動かします。
1922年に発刊されたリップマン「世論」では、
ニュースについて、こう論じています。
「大衆がたえず暗示にさらされているからである。
大衆が読むのはニュース本体ではなく、いかなる
行動方針をとるべきかを暗示する気配に包まれた
ニュースである。大衆が耳にする報道は、事実そのままの
客観性を備えたものではなく、すでにある一定の行動型に
合わせてステレオタイプ化された報道である。」
高木徹『戦争広告代理店』(講談社)は、
2002年に出版され、講談社ノンフィクション賞・
新潮ドキュメント賞を受賞し、自分も発売当時にも一度読みました。
広告にキャッチはつきものですが、
たったワンフレーズが、歴史を、世界を変えてしまう
言葉の重みに、改めて考えさせられました。。
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