「越野ぉ~、コレあげる」
「マジ?すっげ~嬉しい!!これでコンプリート!!」
クラスの女子から何やら貰ったらしい越野は、スキップを踏みそうな勢いで自分の席へと戻ってきた。
「…何、貰ったの?」
仙道は気が気ではない。
大事な恋人がオンナノコから何かものを貰って大喜びしているのだから。
如何せん、男同士の恋愛だ。
オンナノコが相手となると、分が悪いのは確かだ。
「…ヒミツ」
掌で隠れるそれを、越野は大事そうに握り締めている。
「見せろよ」
「い・や・だ」
イ~っと歯を見せてそういう越野に、仙道はつかみかかりそうな勢いで近寄るとその手を握る。
「うわ~、ヤメろって、壊れるからッ!!」
「ねぇ、越野。オレにも見せられないものなの?」
凶悪なまなざしで仙道は越野を見つめる。
それほど、隠したいものなの?
そんなに、大事なものなの?
なら、いっそ壊してしまおうか?
ニッコリ、と笑うと、仙道は握った手に力を込めた。
『♪勇気の鈴がりんりんりん~ 不思議な冒険るんるんるん~♪』
その途端、音楽が聞こえ出す。
なんとなく聞き覚えのあるその音に、何だろう、と仙道は首を傾げる。
「あぁぁ~」
がっくり、とうなだれて、降参したらしい越野が、ようやく掌を開く。
掌に乗っている、二頭身のパンの形をしたキャラクターは、さすがの仙道にも見覚えのあるものだった。
「………好きなんだよ」
ムッとした顔でそう言う越野を見ながら、仙道はその普段は下がっている目をさらに下げて小さく笑った。
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5月4日。
今日の誕生花は、タイム。
花言葉は、『勇気』
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