越野宏明、17歳。




青春真っ只中な彼は、最近妙な悩み事を抱える羽目に陥っていた。


陥っている原因は、同じ部活の仲間のツンツン頭のせいなのだが。


この悩みは、ついぞや先日勃発した。


親友だと思っていたその男-仙道-に、突然、級友達の前で告白されるという男としてはとてもありえないシチュエーションで、大サプライズを起こされたのだ。


まぁ、冗談、ということで級友達にはカタはついたのだが…。


その後の授業は散々で、どうしてやろうかと部活に行った途端に本人を吊るし上げると、悪びれもなく、『だって、好きなものは仕方ないじゃない』…などとほざかれ、挙句の果てには誰もいないのをいいことに、ギュッと優しく抱きしめられたのだ。


…………。


思い出しただけでも、腹が立つ。


こっちはあれから散々な目にあっているというのにもかかわらず、本人は至って涼しげな顔をしていて、重苦しい自分とは裏腹だ。


………それなのに。


アイツを嫌いになれない自分を。

どうしたいのか分からない自分を。

自分自身で持て余している。


どういう意味で自分を好きなのか分からないアイツに。

あれからそれ以上は仕掛けてこないアイツに。

どうしてこんなにイライラするのか。


堂々巡りする考え。

授業は当然上の空で、ただ機械的にノートに写しているという体たらくぶり。


部活だけは何とか根性でこなしてはいるものの、更に当然ながら、あれだけ日中身体を動かしているにもかかわらず、眠れない日々も続いている。


身体に悪いこと、この上ない。


最近かなりの量が増えたため息を重苦しくひとつ吐くと、原因を作った仙道が、大きな伸びをしながらやってきた。

どうやら、午前中の授業が終わったらしい。


のそのそと教科書やらノートやらを机に仕舞っていると、ニコヤカに笑いながら仙道が自分に近づいてきて口を開いた。


「…越野ぉ、昼メシ行こうぜ」




ぷちん。


その能天気な顔を見た途端、越野の中で何かが弾けた。




何でコイツの為に、こんなに悩まなきゃいけないんだ!!


それ相応の報復をしないと、治まらねぇ。



「おぅ」


口元だけは笑い、目つきは最悪そのものの、その凶悪な顔を見て、周囲はビビッたにも関わらず、動じなかったのは『恋は盲目』な仙道だけだった。





「う~ん、やっぱり気持ちいいよなぁ…」


学食で久しぶりにガツガツとスペシャル定食大盛りをかっ喰らい、屋上に上がり思い切り伸びをして深呼吸をした仙道に、越野は凶悪なくらいにニッコリと笑った。




最高に驚かしてやんよ!!




「そうだな…こんな気分になるくらいにはな!!」


グイッと学ランの胸倉を掴み、越野は驚いている仙道の前でもう一度凶悪な笑いを見せると、その唇に自分の唇を重ねた。


きつく吸い上げて、その唇を離すと、仙道は驚いた表情のままフリーズしている。


こんなコイツの顔なんて、初めて見た。

なんだか、かなり気持ちがスッとした。



「じゃぁ、オレ、次は移動教室だから戻るわ」



ニ~ッコリ。

満面の笑みを浮かべると、フリーズした仙道を後目に、越野は軽快な足取りで屋上を後にした。








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4月24日。


今日の誕生花は、パフィオペディラム。


花言葉は、『軽快』



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