「ごめんなさい…」


キミは何に対していつも謝るのだろう。
快楽を享受したこと?彼を忘れられない自分に?

決まってセックスの後、腕に抱き寄せれば首元に顔を埋めて、そう呟く。


「彰…」
名前を呼び、髪を撫でる。


普段は痛いのではないかというくらい逆立てた髪も、本来の姿に戻って俺の指先に柔らかく絡む。
優しくその額にかかる髪を撫で上げ、その生え際にそっと唇を寄せる。


しっとりと汗ばんだそこは、甘い香りがする。
ゾクゾクするような、狂わせるようなそんな薫り。


「…ごめんなさい…」


ほら、また小さく呟く。
不実な恋人に裏切られた可愛そうなキミは、まだその恋の痛みを忘れられない。


そう仕向けたのは、俺。
キミを手に入れたかったから。

どうしても、自分一人のものにしたかったから。


付け入るように、近づいた。
淋しそうな顔で俺を見つめるキミを手に入れた。


今まで恋人を抱いていたキミが、抱かれるというのは抵抗もあっただろうに。
大人しく身を委ねたのは、忘れてしまいたかったからなんだろ?



忘れさせてあげる。
忘れさせてみせる。



何度でも、甘い楔を打ち込んで。
俺しか必要がなくなるように。




繊細なキミが、あの不実な恋人を忘れるその日まで。





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4月20日。

今日の誕生花は、セイヨウオダマキ。

花言葉は、『想い出の恋人』


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