「なぁ…なんか最近オマエ、おかしくね?」


昼休み。


とんでもないデカい弁当を平らげた挙句、2つ目の購買の焼きソバパンを開けながら、越野は仙道にそう尋ねた。


「…そう…かな?」


おどおどとそう答える自分は、いつも通りに振舞えているのだろうか?


越野の強い視線から、自然に見えるように視点を手元の弁当へ向けてそれから逃れる。


手元の弁当は、まだ半分以上も残っていて、仙道の好物である卵焼きにもまだ手をつけられていない。


「どっか調子悪いのか?」


直接見ているのは辛くて。


でも、見ていたくて。


仙道は弁当箱から、そっと視線を上げて、もぐもぐと口を動かす越野のその口元を見つめる。




健康的な彼。


不健康な感情を抱いている自分。




こんなに消極的になる自分は、寧ろ嫌いだ。


でも積極的になることもできない。




「ホントに、大丈夫か?」


自然に伸ばされた手は、仙道の心を知る由もなく、そっと額に触れる。


その指先の温度が、あまりにも熱くて。


そこから火でもついたかのように躯中が熱くなる。




そう、この『関係』を失うのが怖くて。


それすらなくなってしまうことには耐えられないから。




何もいえない。


何も行動に移せない。




まるで初恋をしている内気な少女のように、仙道は俯き、その長い睫を伏せた。




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4月18日。


今日の誕生花は、アマリリス。


花言葉は、『内気な少女』


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