どうしても勝ち得たい信頼を持つ人がいる。
強いカリスマ性と、チームメイトから絶大な信用を置かれているその人に。
プレーヤーとして、人間として。
その人からそんな『信頼』を受け取ることが出来たら…どんなに倖せな事だろう。
ダムダム、
手元で一度、ボールを弾ませる。
そうする為にやるべき術は、今までに培ってきたモノでは不可能であることは既に宣告され、
暗中模索だった自分にヒントを与えてくれたのも、その人で。
それも、何気ないその一言で。
パシッ
床から戻ってきたボールを両手でしっかり受け止める。
その人からパスを貰った様に、それは大事に。
必ず決めなければならない。
どんなことがあったとしても。
それが自分にとって、『信頼』を勝ち得ることのできる、今出来る唯一のことだから。
視線と意識を集中させる。
朱色の、その一点に。
『オマエのフォームは、見ていて惚れ惚れするくらい綺麗だ』
腕を伸ばす。
何度も、何度もシュミレーションしているように。
高く、高く。
その人に少しでも届くように。
『信頼』の証が、両腕から飛び立つ。
見守る自分の想いを込めて。
その軌跡が、スローモーションで描く様にゆっくりと、その朱色の中に消えていく。
パシュッ!
…ダムダムダム…
勝ち得たい、そして絶対になくしたくない、その証の行方を辿るように動かした宗一郎の視線の先には、それを手にした「その人」が立っていた。
「そろそろ、止めたらどうだ?」
「牧さん…」
気配りを忘れない、こうやって残ってやっている自分を最後まで待っているようなそんな人。
どうしても、欲しいのだ。
このひとの、『信頼』を。
「ラスト一本、お願いします」
その腕から放たれる、パスを渇望している自分。
判った、というように一つ頷くと、牧は両手でそれを自分へと押し出した。
パシッ!!
受け取ったそれは、先程までの床とは比べ物にならない、強い力が手に伝わる。
痺れる位に熱い、その塊を受け取るが早いか、宗一郎はそれが冷めぬうちにその腕から解放した。
それが、自分が今彼に見せる事ができる、唯一の『信頼の証』だから。
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4月17日。
今日の花言葉は、ラクスパー。
花言葉は『信頼』
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