ストイックという表現よりも、凛としているという方が合っていると思う。




そんな後姿を、藤真はじっとみつめた。


何かと比べられてきた『神奈川の帝王』と呼ばれる、その背中。


頂点を極めても尚、高みを求めて己を鍛え上げるその精神は崇高だ。



シュッ



一点を見つめ微動だにしなかった身体が、その両腕を伸ばした。


いつもなら聞こえる、騒がしいくらいの歓声さえ聞こえない。


ただ、そのボールを投げる音だけが、藤真の耳に響いた。


その両腕から放たれたボールは、ゆるやかな放物線を描いてリンクに消えていく。


その綺麗なフォームを手に入れるまで、どのくらいの努力をしたのだろうか、この男は。


人知れず努力を重ね、そして手に入れたのだろう。



『帝王』という名前を、

『ナンバーワン』という地位を。



ライバル、というよりも、同士に近い彼の横顔をふと見やる。



プレッシャーをももろともしない、その強い精神力は、すでに美に値すると思う。



誰もが憧れ、それでも手に入れることが出来ないもの。



二回目の放物線がゴールに入り、藤真は再び始まる戦いに向けて彼を一睨みすると、助走をつけた。







負けられない。

負けたくない。

この男にだけは、絶対。





藤真の挑戦的な視線に、彼は不敵にニヤリ、と一つ笑いを返しただけだった。










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4月4日。

今日の誕生花は、サクラ。

花言葉は『精神美』



今日は、(勝手に)双璧記念日なので、

双璧ネタ。


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