『この感動を今一番誰に伝えたいですか?』
向けられたマイクに、瞼に浮かんだのはただ一人。
でもそれを口に出すことすら、もう許されない。
「…ここまで育ててくれた両親に…」
誰もが疑いを持たない笑顔と、優しい瞳で俺は嘘をつく。
普段通りのポーカーフェイス。
あの時から、ずっとオレはオレを演じている。
もうどれくらい、心の底から笑ってないだろう。
もうどれくらい、なりふり構わず泣いていないだろう。
オマエが、俺の前からいなくなってから。
『今大会のMVPは、仙道彰選手でした。どうもありがとうございました』
「ありがとうございました」
見てくれているだろうか。
この世界のどこかで、オレの姿を。
その為だけに、頑張っているんだ。
それだけが、今残されたオレのたった一つの心の拠り所。
世界の誰の、賞賛もオレには要らない。
たった一人だけの賞賛があれば、充分なのに。
スタンドの歓声に手を上げて答えながら、居る筈のない黒髪を捜す。
こんなに未練がましい人間だなんて、オマエがいなくなってから初めて気づいた。
「………越野………」
汗を拭く振りをしながら、オレは小さく呟いた。
オマエの賞賛の声だけが、オレは欲しいのに。
もう、それは叶わぬ夢なのか………。
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4月1日
今日の誕生花は、ウイキョウ
花言葉は、『賞賛』
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