家族へのサポート 第2回:きょうだい児・家族全体へのサポート
特別支援教育を考えるとき、どうしても「障害のある子ども本人」に視点が集中しがちです。しかし実際には、その子どもを囲む家族全体に影響が広がっています。とくに、同じ家庭に育つきょうだい児や祖父母などは、本人と同じくらい大きな役割を担っていることがあります。今回は「きょうだい児」「家族全体」に焦点をあてて考えていきます。
※きょうだい児に関しては別記事で詳しく取り上げています。そちらも併せてぜひご一読ください。
1. きょうだい児とは
きょうだい児とは、障害や慢性疾患を持つ子どもの兄弟姉妹のことを指します。
「特別な支援を必要とするきょうだいがいる」という経験は、その子の成長や生活に大きな影響を与えることがあります。例えば、幼い頃から「我慢する」場面が多かったり、保護者の関心がきょうだいに向かう時間が多いために「寂しい」と感じることもあります。
一方で、思いやりや協力心が育ちやすいなど、ポジティブな影響も少なくありません。
2. きょうだい児が抱えやすい思い
研究や実践の中でよく報告されるきょうだい児の思いには、次のようなものがあります。
- 「自分のことは後回しにしなければならない」
- 「親に心配をかけてはいけない」
- 「友だちにきょうだいのことをどう話せばいいかわからない」
- 「きょうだいが愛されているのに、自分はそうじゃないのではないか」という不安
こうした感情は、必ずしも常に表面化するわけではありません。むしろ「良い子」として振る舞い、心の内を見せない場合もあります。しかし、心の奥に積み重なった感情が思春期や青年期に表れるケースもあるため、周囲の大人が早い段階から気づき、寄り添うことが大切です。
3. きょうだい児への支援の方法
では、学校や地域はどのようにきょうだい児を支えられるのでしょうか。いくつかの具体的な方法があります。
- 本人の気持ちを受け止める場をつくる:カウンセリングや交流会で、自由に話せる環境を整える。
- きょうだい児だけの活動機会:地域によっては「きょうだいの会」があり、同じ立場の子ども同士が遊びながら安心して語り合える。
- 「自分の時間」を持つ大切さを伝える:我慢し続けるのではなく、自分の楽しみを持ってよいことを周囲が積極的に伝える。
こうした支援は特別なものでなくてもかまいません。「あなたも大切に思われている」というメッセージを繰り返し届けることが最も重要です。
4. 祖父母や親戚の存在
家族を支えるもう一つの大きな柱が祖父母や親戚です。
特別支援学校の子どもを育てる家庭では、送迎や日常のケアを祖父母が担っているケースも少なくありません。しかし一方で、障害に関する理解の差から、世代間で意見が食い違うこともあります。
「しつけが足りないのではないか」「昔はこうだった」といった言葉が、保護者の心を傷つけることもあるのです。
こうしたすれ違いを防ぐには、学校や支援機関が祖父母を含めた家族に向けて障害特性や支援の方法をわかりやすく伝える機会を持つことが効果的です。祖父母が理解者となれば、家庭全体の安心感は大きく高まります。
5. 家族全体の「チーム感」を育てる
支援の現場では「家族支援」という言葉がよく使われますが、その本質は「家族全体が一緒に進んでいく感覚を持つこと」にあります。
障害のある子どもを中心にして、保護者・きょうだい児・祖父母が「役割を分担しながら無理なく関われる」状態が理想です。
たとえば、送迎は祖父母が担い、遊び相手はきょうだいが引き受ける。その間に保護者が休息を取るなど、お互いを支え合える形を意識することが重要です。
6. 学校や地域が果たせる役割
学校や地域が家族全体にできる支援は幅広いです。いくつか例を挙げると、
- 保護者会に「きょうだい児」や「祖父母」に関するテーマを取り上げる
- 夏休みなどにきょうだい児も参加できる行事を企画する
- 地域のボランティア団体と連携し、家族全体で楽しめる場を提供する
- 祖父母向けの学習会を開催し、障害理解を深めてもらう
こうした取り組みは、家族が孤立せず、社会とつながりを持つためのきっかけになります。
7. 家族全体を見つめる視点の大切さ
障害のある子どもを育てる家庭では、どうしても本人へのケアに注目が集まります。しかし、家族全体を見渡すことで見えてくる課題や支えは数多く存在します。
きょうだい児が安心して自分らしく過ごせること、祖父母が理解者として力を発揮できること、家族全員が「無理のないチーム」として支え合えること。
これらはすべて、本人にとってもよりよい成長環境をつくるために不可欠です。
8. まとめ
今回は「きょうだい児・家族全体へのサポート」について考えました。
きょうだい児は時に大きな負担を抱えながらも、強さや優しさを身につけていきます。祖父母や親戚もまた、支えとなる存在になり得ます。
しかし、一番大切なのは、家族一人ひとりが「自分も大切にされている」と感じられることです。学校や地域は、その感覚を支える場として重要な役割を果たすことができるはず。
次回は、「家族同士のつながりとピアサポート」をテーマに、横のつながりが持つ力について掘り下げていきます。