家族へのサポート 第3回:家族同士のつながりとピアサポート
障害のある子どもを育てる家庭にとって、もっとも大きな不安の一つは「自分たちだけで抱え込んでしまうこと」です。
周囲に同じような立場の家庭が見つからないと、保護者は「この気持ちは自分だけなのではないか」と感じ、孤立感を深めてしまいます。
そこで大切になるのが、「家族同士のつながり」や「ピアサポート」です。今回はその意味や具体的な取り組みについて考えていきましょう。
1. ピアサポートとは
ピア(peer)とは「仲間・同じ立場の人」を意味します。ピアサポートとは、同じような経験を持つ人同士が互いに支え合うことを指します。
障害児を育てる家庭におけるピアサポートは、専門家の助言とは異なり、「同じ経験をしているからこそわかる安心感」が最大の強みです。
「それ、うちもあったよ」「私も同じ気持ちになったよ」という一言が、孤独感を和らげる大きな力になるのです。
2. 保護者会や親の会の役割
多くの特別支援学校や特別支援学級には、保護者会や親の会が存在します。これらは情報共有や行事運営だけでなく、親同士がつながる場として大きな役割を果たしています。
たとえば、
- 子どもの成長の悩みを打ち明け合える
- 進路や将来に関する情報を交換できる
- 「愚痴を言ってもいい」安心感が得られる
といった効果があります。
特に「愚痴を言える場」があることは重要です。日常生活ではなかなか口に出せないことも、同じ経験をしている相手なら安心して共有できます。
3. 地域での家族同士のつながり
学校以外にも、地域にはさまざまな家族会やサークルがあります。
福祉センターが主催する「親の会」や、NPOが運営する「きょうだいの会」、SNSを通じたオンラインコミュニティなど、形は多様です。
近年ではコロナ禍を経て、オンラインでのつながりも広がりました。距離や時間の制約を超えてつながれるメリットは大きく、孤立しがちな家庭にとって貴重な支えとなっています。
4. ピアサポートがもたらす心理的効果
ピアサポートの効果は研究でも明らかになっています。
例えば、
- 孤立感が減り、安心感が増す
- 「自分だけではない」と思えることで前向きな気持ちになる
- 新しい支援情報や制度を知るきっかけになる
- 長期的な付き合いを通じて「一緒に子育てをしている仲間」が得られる
といった点が挙げられます。
中には「親の会に参加していなかったら、乗り越えられなかった」という声も多く聞かれます。
専門家の支援と同じくらい、あるいはそれ以上に、同じ立場の人との出会いが心を支えることもあるのです。
5. ピアサポートの課題
一方で、ピアサポートにはいくつかの課題も存在します。
- 経験談が「唯一の正解」と誤解されることがある
- 家庭ごとに状況が異なるため、比較して落ち込んでしまう場合がある
- 会に参加する時間や気力がない家庭もある
こうした課題を防ぐには、「多様な立場を尊重する姿勢」が欠かせません。「うちではこうだったけれど、あなたの家庭は違って当然」という視点を共有することで、安心して語り合える場が広がります。
6. 学校や地域の役割
学校や地域は、こうした家族同士のつながりを支える役割を持っています。具体的には、
- 校内で定期的に「保護者交流会」を開く
- 地域の家族会やNPOと連携し、参加を紹介する
- きょうだい児や祖父母も含めた交流イベントを企画する
- オンラインでの情報交換の場をサポートする
といった取り組みが効果的です。
大切なのは「無理なく、気軽に参加できる仕組み」を作ることです。強制感のない緩やかな関わりの方が、長く続きやすいのです。
7. 保護者同士の横のつながりが持つ力
ピアサポートの最大の魅力は、「親同士の横のつながりが持つ力」にあります。
学校や専門機関からの支援は「縦の支援」ですが、ピアサポートは「横の支援」です。同じ目線で「わかるよ」と言える関係が、孤立を防ぎ、安心を広げます。
この「横の力」が、家族にとって長期的な支えとなり、障害のある子どもの成長にも良い影響を与えます。
8. まとめ
今回は「家族同士のつながりとピアサポート」について取り上げました。
同じ立場の家庭とつながることは、孤独をやわらげ、希望を見つける大きな力になります。一方で、多様性を尊重し、比較による落ち込みを防ぐ視点も大切です。
学校や地域は、そうした「安心できる出会いの場」を支える役割を担っています。
次回は、「学校・地域・支援機関との連携」について、家族支援をさらに広げる視点を考えていきます。