性教育はなぜ必要なの? 

知的障害のある子どもたちにとって、「性」というテーマは、とても大切で、そして少し繊細な話題です。
「うちの子に、性教育なんてまだ早いのでは?」「必要なのは思春期になってからでいい」と感じる保護者の方も多いかもしれません。

でも、性教育は「大人になってからの話」ではなく、「今、日々の生活を送っている子どもたちに必要な学び」なのです。
今回は、特別支援学校での現場経験をもとに、「なぜ性教育が必要なのか」を、保護者の皆さんにわかりやすくお伝えします。

1. 「性教育」は、性行為の話だけじゃありません

まず最初にお伝えしたいのは、「性教育=性行為の話」ではないということ。
むしろ、知的障害のある子どもたちに必要な性教育は、もっと広く、生活の中での「身を守る知識」や「人との関わり方」の基本に関わるものです。

  • 自分の体のしくみや名前を知る
  • 着替えや入浴など、プライベートな場面のマナーを理解する
  • 「いやなことはイヤ」と伝える力
  • 他人との適切な距離感を知る
  • 性的被害やトラブルから身を守る力を育てる

これらはすべて、「性」の話でありながら、実は「生活スキル」の延長線上にある学びなのです。

2. 知的障害のある子どもに起きやすいトラブル

実際の学校現場では、以下のようなトラブルや困りごとに出会うことがあります。

  • 異性・同性の友だちにしつこく触れてしまい、相手との関係が悪化してしまう
  • トイレの個室や更衣室でのマナーが身についておらず、トラブルに
  • ネット上で知らない人とやり取りし、写真を送ってしまう
  • 他人の体を見て興味を持ち、本人は悪気なく触ってしまう

これらの行動は、決して「悪意」があってのことではありません。
「何が正しいのか、どうしてダメなのかを教わっていない」ことが原因であることが多いのです。

3. 「教えないこと」がリスクになる

「うちの子は性に興味がなさそうだから、まだ大丈夫」
「性教育なんて教えたら、逆に興味を持ってしまうんじゃないか」
…そんな声もよく聞きます。

でも実際には、「何も教えられていない状態」が、もっとも危険な状況です。

特に知的障害のある子どもたちは、周囲の人の意図を読み取ったり、「なんとなく」の空気で状況を判断することが苦手な場合があります。
だからこそ、正確な情報を、年齢や理解度に応じて、わかりやすく、くり返し伝えていくことがとても大切です。

4. 年齢に合わせたステップで性教育を

性教育は一度にすべてを教えるものではありません。
子どもの年齢や発達段階に合わせて、段階的に進めていくことがポイントです。

年齢・発達段階 主な内容
幼児期〜低学年 からだの名称、プライベートゾーンの理解、着替え・トイレのマナー
中学年〜高学年 第二次性徴(体の変化)、異性・同性との関わり方、嫌なことを断る力
思春期以降 性衝動への対応、恋愛感情、自他の尊重、性被害・加害の理解

5. 保護者と学校の連携が大切

学校では、性教育の一部を授業や生活指導の中で取り入れていますが、すべてをカバーするのは難しいこともあります。
だからこそ、保護者の方との連携がとても大切です。

例えば、

  • 「家でもこんな話をしています」
  • 「お風呂のときに体の名前を教えています」
  • 「最近気になっている行動があって…」

など、家庭の様子を教えていただけると、学校でもその子に合った支援を考えやすくなります。

6. 「自分を大切にすること」から始まる性教育

性教育の出発点は、「自分を大切にすること」です。
そして、「自分を大切にできる子は、他人のことも大切にできるようになる」と、私は信じています。

だからこそ、性の話を避けるのではなく、正しい知識とあたたかな言葉で伝えることが、子どもたちの未来を守る力になるのです。


次回は、「家庭でできる性教育の始め方」をお届けします。
身近な場面でできる声かけや絵本・教材の選び方など、実践的な内容をお伝えしていきますね。